2025/06/01-2025/06/14
2025/06/01 日曜日
今日は近所の犬が遊びに来ている。レスキューされた当初、テオはこの子と一緒に暮らしていたので、再会を嬉しそうにしていた(実は毎週会ってるんだけどね)。犬同士でも相性というのは、確実に存在する。
そろそろ暑くなるだろうと思い、家中のエアコンをチェックした。私はエアコンが壊れることに対する恐怖を抱いているので、肌寒い頃から「今年のエアコンは大丈夫だろうな」と考えたりしている(なぜエアコンが壊れているのでは? と疑うかというと、私の住む地域は寒いので、冬場はエアコンではなく、別の暖房器具を使っているから。むしろ一年の半分を休ませているのだから、エアコンの調子はいいのではと思えるかもしれないが、そこはへんなものフォビアの私のことだから、色々と不安を抱えるというわけである)。
すると、一階に設置してある二台がどうも怪しい。この二台は家を建てた時に設置したものだから、もう19年選手というわけだ。エラーが出続けるために業者さんに頼んで見てもらう。取り替え時ですねという想像していた通りの答えがあったため、すぐに取り替えをお願いするも、「今、少し時間がかかります」ということで、なんとか今月中には設置してもらえるようになった。
子どもの頃、私が住んでいた地域は30度なんて滅多に越えない涼しい地域で、クーラーは商店の集まるアーケードにしかなかった。それに比べて最近の琵琶湖は、40度を超える日もある。地球全体が熱くなっているのだから仕方ないことだとは思うのだが、気候で(いや、主に水位で)メンタルを左右される私は気をつけなければと考えた。
よくよく考えてみれば、私が幼少期に住んでいたのは川が海に流れ込む、いわゆる河口付近だった。水が増えたり減ったりする様子を常に見ていたために、そのうち水位に敏感になってしまったのは当然の結果だと思う。
2025/06/02 月曜日
月1の美容院。特になにも変更なしで、淡々と髪を切ってもらう。私を担当してくれている若い女性は、髪をカットするときしか話をせず、それ以外は私に店舗専用のiPadを渡してくれるので大変気が楽だ。ひとたびこのような美容師さんに出会ってしまうと、なかなか他に行こうとは思えない。さっさと家に戻って翻訳をした。なかなか進まないが、止まると完全に止まるので、とりあえず前に進んでおく。
2025/06/03 火曜日
「入国管理局から、まだ収拾されていない文章があることをお知らせします」と、キリッとした連絡がケータイに入った。収拾されていない文章がある……? 文法があやしくないか……? と気づいたのでガチャンという気持ちを込めて通話終了ボタンをタップししたのだが、よくある詐欺らしいですね。
最近、私にメールを書いても反応が薄いと判断した編集者さんから連絡が入ることが多いため、とにかく着信には必ず応対するようにがんばっている。
2025/06/04 水曜日
用事があって立ち寄った夫の実家で、義父がひとりでぼんやり座っていたので、「お義父さん、どうしました?」と一応聞いてみると、給湯器が壊れたという。軽く絶望しそうになる。給湯器を見てみると、確かに壊れているようだ。壁に設置された給湯器用リモコンもいつも通り動かない。うーーむ、これは一度、再起動してみるかと思って再起動もしてみたが、どうも故障しているようだった。
「お義父さん、どれぐらいお風呂って壊れてたんですか?」と聞いてみると、「二週間くらいかな」と言うではないか。デイサービスで入浴をしていない義父は、いままでどうしていたというのか。バイオハザードみたいなことになっているのか。すぐに工事の依頼をした。
ああ、本当に何があるかわからないのが人生だ。エアコンに給湯機に、この夏は物入りだな。
2025/06/05 木曜日
電車に乗る機会が増えて、ますます感じるのは、本を読んでいると目立つ、ということだ。ほとんどの乗客がスマホ片手に下を向くなか、一人だけ文庫を開いている人なんて、そりゃあもう、目立つ! もちろん、スマホで、Kindleで、本を読んでいる人もいるでしょうが、その姿が目立つか、目立たないかということから言えば、紙の本を持っている人は大いに目立つのだ。hotdudesreadinというインスタグラムのアカウントのフォロワーが126万人なことには別の理由もあるとは思うが、とりあえず目立つなあということをお伝えしておきます。
2025/06/06 金曜日
今日は文芸誌『すばる』の編集長が滋賀までやってきてくれた。テオと初対面だ。すばるの「湖畔のブッククラブ」もかなり書かせて頂いたということで、次の方向性の相談などをしたのだが、野田さんはあっさりとしていて、楽しい方だ。連載は継続させていただけるということで、安心した。
2025/06/07 土曜日
今日ぐらいのんびりしないと死ぬとおもって、家でだらだらと片付けをしていた。一番片づけたいのはデスク周りで、なぜかというと、本が売るほどあるからだ。最近は献本を頂くことも大変に増えて、とりあえず積ん読山の標高が高くなってきている。整理をすればいいのだが、整理した本をどこへ持っていけばいいのか。やっぱり庭に部屋を立てるべきだと思う。ここのところ数年、仕事部屋建築の夢を抱いているが、今年、いや来年こそは夢を現実のものとしたい!
2025/06/08 日曜日
数年前に心臓手術を受けた病院の院内書店に『兄の終い』が売られていたとの一報が入る。兄を終ったのは、術後一年だったので、間に合ったのは先生たちのおかげなのだ。義母をはじめて認知症専門病院に連れて行ったその日、私は塩釜にある葬儀会社に電話していたんだけど、本当に人生は何があるかわからない。
2025/06/09 月曜日
最近、料理をしたりキッチンをきれいにするときは、iPadの13インチを置いてYouTubeで動画(主に格闘技)を見たりして作業している。これがなかなか楽しくて、作業が進むのでおすすめしたいのだが、今日はNetflixで「潜水艇タイタン: オーシャンゲート社が犠牲にしたもの」を視聴した。なんという恐ろしさ。
そもそも、シチュエーション自体、閉所恐怖症の私からするとあり得ない。あんなに狭い鉄製の球体で、何千メートルも潜るってもう、想像しただけで無理。そのうえ、開発段階で山ほどの問題点が指摘されつつも企業トップはそれを無視。ペゾスやマスクになりたかったというオーシャンゲート社CEOストックトン・ラッシュもこの事故で命を失ったのだが、他の犠牲者家族は誰に責任を問えばいいのか。見ているだけで恐ろしかった。
2025/06/10 火曜日
翻訳がなかなか難しい。参考文献をめくりすぎて、ページがボロボロになってきた。これ、Kindleバージョンがあると検索しやすいなと思って探したが、残念ながらなく、アナログ方式でがんばっている。最初は絶望しかなかったが、ページが進む度に「できるかもしれない」という気持ちが膨らんでくる。何度も何度も同じ文章を訳して、きれいにしていくと、どれだけ難解だった文章も不思議と慣れ親しんだものになる。この繰り返しを延々と続けるのだ。がんばって、俺。
2025/06/11 水曜日
作業で疲れ切ってコメダに逃げ込む。読まなければならない本を読もうとするも、雑音が気になって読めない。結局、自分の車に戻って車内で読む。明日から東京。
2025/06/12 木曜日
東京。クォン・ナミさん、藤田麗子さんとお会いした日。まずは憧れのナミさんと集英社で初対面! ナミさんは小柄で優しそうで、日本語がとてもお上手だった。はじめて会ったような気がせず、お久しぶりですみたいな気持ちになってしまった。集英社の会議室で翻訳家の藤田麗子さんを交えて対談。そして神楽坂に移動して会食をし、最後はナミさんと二人で飲む!! という、すごい一日だった。ナミさんが初めてメールを下さってから一年ぐらいになるのか。こうやって実際にお会いできるとは、夢にも思わなかった。日本の有名な作品の韓国語バージョンはほとんどナミさんの手によるものだ。すごい。
2025/06/13 金曜日
東京。集英社の編集者さんとランチをしてから、京都まで戻った。京都駅で、いつものデパ地下ショッピングをして、そそくさと滋賀に戻った。以前は、東京から滋賀に戻ると、海外旅行でも済ませたような気持ちになったが、最近は慣れたもので、よし、今回も無事終わってなによりといった気持ちになる。
2025/06/14 土曜日
疲れは残っているものの、仕事はある。
とにかく翻訳が難しくて、頭を抱えている。それでも毎日じわじわと進めており、かなりのところまで進んできた。ただし、これはすべて一度見直しと書き直しをする必要があるなと気を引き締める。気を引き締めると財布の紐が緩むので、ご褒美で何かを買おうと直木賞候補作をすべて購入した。まったく反省していない、むしろウキウキしているが、いつ読めるのか。
翻訳家、エッセイスト。1970年静岡県生まれ。琵琶湖畔に、夫、双子の息子、ラブラドール・レトリーバーのハリーとともに暮らしながら、雑誌、ウェブ、新聞などに寄稿。
主な著書に『兄の終い』『全員悪人』『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術
』(CCCメディアハウス)、『犬ニモマケズ』『犬(きみ)がいるから』『ハリー、大きな幸せ』『家族』(亜紀書房)、『村井さんちの生活』(新潮社)、 『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』(KADOKAWA)、『ブッシュ妄言録』(二見書房)、『更年期障害だと思ってたら重病だった話』(中央公論新社)など。
主な訳書に『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『ゼロからトースターを作ってみた結果』『黄金州の殺人鬼』『メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語』『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』『捕食者 全米を震撼させた、待ち伏せする連続殺人鬼』など。