2025/02/15-2025/02/28
2025/02/15 土曜日
広島から戻り、ぐったり。楽しい旅のあとでも疲労は必ずやって来る。メンタルもそれなりに落ちる。そういうときは、部屋の掃除をするに限る。ぴかぴかになった部屋で寝転んで、インターネット三昧をしばらくやったら、すぐに元気になる。元気になったら原稿を書く。これで私のメンタルは確実に安定する。
それにしてもめまぐるしい二日間で、一緒に呉まで行ってくれた新潮社の白川さんも山室さんも、お疲れになっただろう。信友直子監督は私が予想していた以上にパワフルで明るい方だった。力がみなぎる感じだ。お聞きしたかったことはすべて聞くことができたとは思うが、どのような記事に仕上がるのか楽しみにしている(新潮社Webマガジン「考える人」の記事になる予定)。そして呉の景色の美しさは格別だった。そのうえ何を食べても抜群に美味しかった。
憧れの呉。
大ファンの良則お父さんが淹れてくださった海軍コーヒー。
心に残る旅だったな。
2025/02/16 日曜日
昨日の朝、広島のホテルから発送した荷物が、午前中にしっかり到着していた。私が旅に持っていく荷物は最小限なのだが(衣類はジャージ素材のものしか買わなくなった。シワにならず、軽いから。靴はたいてい一足だし、下着類も軽量のものを選んで行く)、出先で頂くもの、そして当然のように買うものが多く、ほぼ必ずホテルから荷物を発送することになる。
以前は余分なバッグを持っていって、すべて自分で持ち帰っていたのだが、重い荷物を運ぶことで失う体力をお金に換算したとすると、発送料金の方が格段に安いと気づいた。というわけで、ホテルから発送する荷物には化粧品の類いもすべて入れてしまい、ほとんど手ぶらで家に戻る。しかし不思議なことに、手ぶらで戻った京都駅の伊勢丹に吸い込まれることが多く、結局、紙袋ひとつぐらいは荷物が増える。これは、家で待つ息子たちのお弁当を購入するからだ。夫にはワイン一本とチーズを買う。自分自身は、小さな押し寿司があればよい。あと、たまにデパコス。
2025/02/17 月曜日
京都新聞連載「現代のことば」入稿。数人の書き手が担当している「現代のことば」は人気コラムらしく、最近は読者の方から感想を頂く機会も増えた。編集部が送ってくれた紙面を何気なく見たら、結構大きく掲載されているんですね! 驚いた。京都時代に知っていた人たち、もしかしたら気づいているのかもしれない。それでも、連絡はとってこないと思う。私と長年暮らした京都との関係は、そのようなものなのだ。わかるでしょ? わかるよね。
2025/02/18 火曜日
3月はかなり出張が多いために、ホテルの予約をしている。博多のホテルを探していたが、なかなか値段が高い。福岡市にふるさと納税をすると安くなるとわかったので、ふるさと納税をして、広い部屋を取った。別に贅沢をしたいわけではないのだが、都会のものすごく狭いビジネスホテルに宿泊すると、夜中に必ず目が覚めて暗い気分になる。不眠症なので、確実に眠ることができるように眠剤もしっかり用意していくのだが、それでも目が覚めてしまい、朝まで眠れないことになる。これが地獄なのだ。原因はたぶん閉塞感。ということで、人間の寿命なんていつまで続くかもわからないし、いい年なんだから、自由気ままに稼いだお金は使うことにした。今まで以上に気ままに使うことになるとは、恐ろしいことだ。
2025/02/19 水曜日
短編の小説を書いている。書きながら、とある人をずっと思い出している。私が昔知っていた人だが、今頃どうしているだろう。あれから、どのような人生を歩んだのだろうか。幸せだったはずだけれど、とある場所で、離れた距離から小さく手を振って別れて以来、彼の行方はわからない。いろいろな人に聞いてはいるのだが、誰も彼がどうなったのかを知らない。その人物の名は「原田」。
午後になって、産経新聞から依頼のあった原稿を書いた。
2025/02/20 木曜日
月刊誌から依頼のあった原稿を仕上げた。
翻訳本『ハリウッドのプロデューサー、英国の城をセルフリノベする』(亜紀書房)がそろそろ発売となるのだが、著者ホップウッドのXアカウントをフォローしていたら、どんどん状況が厳しくなってきているのがわかる。ホップウッドは明るいアメリカ人で、そんなアメリカ人がイギリスの片田舎に移住して、先祖が建てた立派なお城をリノベーションするという夢のある実話なのだけれど、アメリカ人とイギリス人の間の意思の疎通ってなかなか難しいようで、すでに移住して何年も経過しているというのに、驚くべきことが起きる。人生をかけて取り組んでいるプロジェクトに山あり谷ありなのは仕方がないとは思うものの、人生って本当に難しいものだなと思う。とはいえ、私はホップウッドを応援したいと思う。
2025/02/21 金曜日
本日もご依頼のあった原稿を、朝一番に仕上げる。ため息が出るほど疲れたが、間に合ったのでよしとする。
人生に別れはつきものだけれど、ハリーとの別れはいまでも辛くて仕方がない。そろそろ、彼が亡くなって一年になる。なぜ、なんの罪もない、ただただ純粋に生きていただけのあの犬が二度も癌に罹って若くして死んでしまったのか。太く短く生きたと言ってくれた方もいるけれど、できれば細く長く……っていうか、なんで私にとって大切な命がいとも簡単に奪われ、私にとってそれほど……なんでもないです……
2025/02/22 土曜日
昔からの知り合いが実家のお寺を継いで、有名になっていることを知る。禅寺に修行に行っていたときのこと、辛い修行の合間にふと遠くを見ると、見たこともないほど美しい女性が立ち、じっと私を見ていたことがある。その人、私が過去に別れた女性だったんですよ……とか言ってた。せん妄じゃないか、辛い修行過ぎて。
2025/02/23 日曜日
義母、暗い場所に入ると凶暴化することが判明した。昨日の夕方、ヘルパーさんに助け起こしてもらうという場面があったのだが、トイレの中が暗くて不安になったのか、いつもからは想像できないほど凶暴になってしまって、私が狼狽えた。しかし、義母は本気だすとこんな感じだったよなと、ちょっと懐かしい気持ちにもなった。
昔、激怒した義母にダイニングチェアで殴られそうになってダッシュで逃げたことが懐かしく思い出された。普通にDVや。
2025/02/24 月曜日
義父のデイサービスへの嫌がらせが止まらない。今日は私が義母をデイサービスに迎えに行き(17時頃)、そのまま整形外科に連れて行きますと、今日も、前日も、しっかり説明しているというのに、18時を過ぎたあたりからデイサービスに「まだ戻らない!!」と激怒して電話してくるという。担当者の方も辟易していて、私のケータイを鳴らして、「理子さん、本当に申し訳ないんですが、もう一度お父さんに説明してくれませんか?」と言うのだった。整形外科の待合で、「なんでデイに電話するんですかッ! 私が病院に連れて行くって何度も言ってるでしょ!! このままじゃ、デイも出禁になりますよ」と怒鳴り散らしたら、整形外科の看護師さんがビックリしていた。
激怒しながら義母を実家に連れ帰り、義父を捕まえて、「ねえ、なんでデイに電話するんだ? 理由は?」と聞くと黙りこくる。「このままだったら、あそこのデイも行けなくなりますよ。何考えてるんですか?」と、今回はエスカレートした。怒りが抑えられなかった。まだまだ修業が足りない。
2025/02/25 火曜日
義父から死ぬほどどうでもいい電話がかかってくる。
「母さんに履かせるのは、ズボンがいいのか、スカートがいいのか」
どっちでもいいから、私に電話しないでくれと電話を切る。
2025/02/26 水曜日
長い文章を書いている。何度も何度も最初に戻り、少しづつ手直ししながら先に進んでいる。翻訳も同時に仕上げなければならないので、生活に文字が溢れて、もう何がなんだかわからない。ぎゅっと目をつぶって布団にもぐり込む。30分ぐらいすると頭のなかも落ち着くので、そこでやっと、もう一度、椅子に座ってパソコンに向き合うことができる。
2025/02/27 木曜日
ケアマネさんと話し合って、義父も一度、認知症専門医の診断を受けた方がいいという結論になった。認知症が始まっているのはわかっているのだが、義母の症状のほうが強いので、義父はなんとなく後回しになっていた。出来る限り早めに行って認知症と認定されれば、受けられるサービスも増えるだろうということ。しかしワシは疲れた。夫に任せた。
2025/02/28 金曜日
メンタル・クリニックの日。眠ることができれば私は満足だ。本当は義父母の認知症の話をしたいのだけれど、クリニックの先生自体が高齢なので、なんとなく話をしにくくて、秘密にしている。そろそろ、月に一度の通院を、できれば数か月に一度にしたいのだが、薬の関係で無理なのだろう。毎月会う先生は、いつもニコニコしている。いい先生だ。私の話に大笑いしてくれ、いつも「あなたは面白いことを言うねえ」とカルテに書き込んでくれる。
先日、診察日がまた一日減ったが、できるだけ長い間開院し続けてくださることを祈る。
翻訳家、エッセイスト。1970年静岡県生まれ。琵琶湖畔に、夫、双子の息子、ラブラドール・レトリーバーのハリーとともに暮らしながら、雑誌、ウェブ、新聞などに寄稿。
主な著書に『兄の終い』『全員悪人』『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術
』(CCCメディアハウス)、『犬ニモマケズ』『犬(きみ)がいるから』『ハリー、大きな幸せ』『家族』(亜紀書房)、『村井さんちの生活』(新潮社)、 『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』(KADOKAWA)、『ブッシュ妄言録』(二見書房)、『更年期障害だと思ってたら重病だった話』(中央公論新社)など。
主な訳書に『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『ゼロからトースターを作ってみた結果』『黄金州の殺人鬼』『メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語』『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』『捕食者 全米を震撼させた、待ち伏せする連続殺人鬼』など。