2025/01/05-2025/01/18
2025/01/05 日曜日
風邪を引いたようだ。年始から、なんたる気の緩みだと思いつつ、一日寝る。Kindleで本を読むが、まったく続かない(本の内容がつまらないのではなく、私の根気が続かないのだ)。
最近、よく風邪を引くが、結局、ちゃんと食べてしっかり寝ると最も早く治るということを、この年齢で理解したような気がする。仕事始めの明日に締め切りが集中しているので、憂鬱な気持ちで寝ていたが、そういや、生活クラブ(食材の宅配)の注文締め切りがもうすぐだったと思い立って、カタログを眺めて過ごした。珍しい食材がいろいろあって楽しい。日々高まっていく買い物欲を効率的に発散できるのは食材選びだ。
正月休みで家のなかに家族全員がいる。朝四合の飯を炊き、午後、四合を再び炊く。成人男性が三人いるっていうのは、こういうことなのだと思う。
2025/01/06 月曜日
とある文庫本の解説を依頼されており、明日締め切りなのだが、原稿用紙10枚程度の長い文章になるので若干緊張している。だったら今日から書けばいいものを、それはやっぱり当日でないと書けないのだった。いつも思う。前日から書けばいいのに。
午後、次男が突然、「かあさん、俺、パソコン買うわ」と言い出した。「なんで!?」と驚いた。というのも、うちの息子たちにはすでにDELLのデスクトップを各自与えているし、そのうえiPadだってiPhoneだって与えている。デスクトップは確かに私のお古だが、それでも十分動く。モニタだって、大きい。
次男曰く、「俺、Macが欲しいんだよね。バイトでお金が十分溜まったし、買うわ」ということだった。あまりに突然のことで、インターネット老人会メンバーである母は大いに焦って、「ぎえええええ!」という奇声を発した挙げ句、「どれを買う、どのモデル?」と詰め寄った。
ノートを買おうと思うんだよねと言うので、ノートぉぉぉ!? 意味わからんぐらい高いのに!? 持ち歩く? なんで持ち歩く? カフェか? あんた、すぐに飲み物とかこぼすけど、大丈夫なん? ジュースとか、どばってやったら一発アウトだよ? 配信か? 何をやる? ゲーム、動画編集、それともプログラミングか!? と矢継ぎ早に聞くと、「もういいわ」ということで、自室に入ってしまった。
かわいい子には旅をさせろと言うが、かわいい子には違いないが、やみくもにパソコンを買わせてもいいのだろうか。インターネット老人会の母さんは心配が募る。
自分が彼の立場だったらと考える。私は高校生のときに、ちょうど価格が安くなりはじめたワープロを親にも言わずに買って、平気な顔をしていたので、歴史は繰り返しているのだと思う。社会人になってからは、もう何台買ったのかわからない。まあ、心配しても仕方がない。相手は大人だから、見守ればいいのだと考えた。
2025/01/07 火曜日
文庫本の解説締め切り。原稿用紙7枚から10枚。それにしても、解説が一番難しいと思うのは私だけだろうか。朝からウンウン唸りつつ、髪を掻きむしるようにして書いた。繰り返すようだけど、解説は本当に難しい。あとがきも難しいけど、解説は、書きすぎてもいけないんだろうし、ちゃんと書かなければいけないのだろうし、とにかく責任が重いような気がする。本当に厳しい戦いであった……。終わったときには魂が抜けていた。入稿してすぐに編集者さんから返信があって、喜んでいただけたようだった。すごく安心した。
実は明日から仕事で広島に行く予定だったが、諸般の事情で延期。なんだかめまぐるしい毎日だ。午前に原稿は書けたので、頭が沸騰してしまわないように、午後は休むことにした。とにかく片っ端から部屋を片づけていく。部屋がきれいになると、なんとかなるような気がしてくる。きれいに片づいたら風呂に入って、しばらくYouTubeを見た。カリスマ3が面白い。応援しているのは、もちろんカカロニの栗谷だ。
夕方になり、Macを買うと意気込んでいる息子に、一体なにをしたいのかと落ち着いて聞き取り調査をしたんだが、ノートパソコンを選ぶ必要がないことがわかり、渋々、仕事用で買ったばかりのDELLのデスクトップを譲った。元々息子の部屋に置いていたデスクトップは私のお古で、それでもスペックは十分だったと思うけれど(そう思っていたのは私だけだったのだが)、買ったばかりのモデルのほうがそりゃあ、新しいのでいいだろうと思い、そうした。
そうしたのはいいのだが、今度は自分が仕事で使うパソコンをどうしようということになり、久々に今度は私がMacでの作業に切り替えることにした。大きなモニタを購入したところだったので(買ったのか)、それに繋いで、周辺機器をいろいろ繋いで、ああもう、面倒くさいわと言いつつ半日かけてMacBook Proでの作業環境を整えた。このMacBook Proはそもそも私が持っていた一台だ。それは息子に譲らないのかと問われたら、それは嫌だ。息子もきっと、いや、そのMacを俺にくれればいいのにと思っていただろう。
そういうわけにはいかないんだよ!!!!!
とりあえず翻訳は十分できるので、このまま様子を見よう。
2025/01/08 水曜日
日経新聞「半歩遅れの読書術」締め切り。朝から頭を抱えつつ、書く。4回ぐらいの連載になると思うのだが、一回目に紹介するのはクォン・ナミさんの『翻訳に生きて死んで』にしようと決めて、書いた。短い原稿だけれど、新聞だから緊張しちゃうな。書き終わったらヨレヨレになった。毎日ヨレヨレだよ。締め切りが多いよ。
テオをドッグスクールに預けてから、今度は翻訳。『ダウントン・シャビー』(イギリスのDIYもの)と、ブリトニー・スピアーズの自伝を交互に。ブリトニーは一章が数ページの構成で、本当に訳しやすい。大急ぎで作業をしている。『ダウントン・シャビー』の方はイギリスが舞台で、主人公がアメリカ人という、ちょっとひねりの利いた面白いシチュエーション。訳しながらゲラゲラ笑ってしまう。素晴らしいキャラの主人公だ。
この二冊が終わったら、残りは一冊。その残りの一冊も半分ぐらいは終わっているので、気が楽だ。仕上がっていない翻訳があると、なんだか落ち着かない。今月末に発売になるパリス・ヒルトンの自伝も合わせると、今年は翻訳本が四冊出版になる予定だ。
今年は何かいままでと違う一冊を書きたくて、車を運転するときに原稿の内容を考えている。仕事をしすぎではないだろうかとか、もうそういうことは気にしないのであった。
2025/01/09 木曜日
今日は締め切りがない日。ちょっと安心する。しかし、ケアマネさんから連絡があり、ヘルパーさんからあがってくるという様々な報告を聞いた。内容をざっくりとまとめると、義父は軽いクレーマーなので、理子さんからちゃんとお話して下さいということでした。
2025/01/10 金曜日
美容院。一日たりとも「なんにもやらなくていい日」がないような気がしてきた。でも、来週は取材があるので、一応、ボサボサの頭をどうにかしなくてはいけないので、いつもの美容院。エルフの荒川ちゃんに似たかわいい美容師さんで、いろいろと話をして戻る。家に戻る途中にあるケーキ屋さんに寄って、息子たちが好きなショートケーキを買った。
2025/01/11 土曜日
何もしなくていい日。しかし、翻訳はある日。
朝からデスク周辺に積み上がっている本を片づける。先日片づけたばかりだったと思うが、また山になっている。最近は献本も多く頂くので(ありがたいことだ)、とりあえず、本が多い家になっている。
夜、静かな部屋で翻訳二時間。
2025/01/12 日曜日
何もしなくていい日。でも、翻訳はある日。
朝からTikTokで様々な動画を見て過ごしていたが、とりあえず、朝四合と夕方四合の飯炊きだけはしておいた。午後、自分がカレーを食べたくなったので、カレーを作る。ヨーグルト、鶏もも肉、トマト、カレー粉で作るシンプルカレー。大変美味しかった。
夜、翻訳を二時間程度やった。
2025/01/13 月曜日
月曜日は憂鬱だ。仕事なんて辞めてしまいたい。それでも締め切りはやってくる。
『ダ・ヴィンチ』「4人のブックウォッチャー」締め切り。発売されたばかりのおすすめ本を二冊選んで紹介するというコーナーを担当させて頂いているが、二冊選んで紹介っていうことは当然二冊読むわけで、これがなかなかどうして大変なのよ。面白い本ばかりでてくるので、選ぶのには苦労しないが、読むのがね! そして、内容をまとめて書くのがね!
午後、翻訳。イギリスのDIY本『ダウントン・シャビー』と、ブリトニー・スピアーズの自伝の作業。夕飯は鍋。切って煮るだけ。
2025/01/14 火曜日
本の雑誌社から依頼されていた原稿の締め切り。愛用しているキーボードについて書いた。そして、新潮社Webマガジン『考える人』連載の「村井さんちの生活」を、予定より少し遅れて入稿。今月も担当編集者さんをお待たせしてしまった。
一日に二本も原稿を書くのはさすがに疲れる。文字数が多い、あるいは少ないはあまり関係ないような気がする。締め切りを守るのか、守らないのかで気持ちは大きく異なる。作家の酒井順子さんは、今まで一度も締め切りを破ったことがないそうだ。私のなかでは偉人レベルの方だが、酒井さんらしいと言えばそうかもしれない。すごいことだ。
なんか、一月は忙しくないか。もう疲れてきた。
夕飯は、面倒くさいので焼肉。焼くだけ。
2025/01/15 水曜日
締め切りはない日。でも、翻訳はある日。朝からひたすら翻訳を続ける。残りが50000ワードぐらいの時が一番苦しいという実感がある。あと少しのところだが、フィニッシュできずに終わった。
2025/01/16 木曜日
文芸誌『すばる』の「湖畔のブッククラブ」締め切り。「湖畔のブッククラブ」は翻訳ものノンフィクション縛りで読むということで、大変なのよ、これが。翻訳もののノンフィクションなんて、90%が鈍器じゃないか。とにかく本が長い、厚い、難しい。毎月、一番頭を悩ませている原稿かもしれない。
とにかく必死に書く。どうにかして上手にまとめられるように、鈍器レベルの翻訳本を毎月読んでいる。入稿するとほっとする。
午前中に仕上がったので、午後はオフとした。とにかく荒れた部屋を片づける。テーブルの上を片づける。溜まった洗濯物を洗う。テオが寝ているので申し訳ないと思いつつ、掃除機をかける。夕飯はオムライス。冷凍ものですまない。
2025/01/17 金曜日
朝9時からよみうりカルチャーのYさんと打ち合わせ。3月のイベントについて。その後、少し遅れてしまったのだが、集英社『よみタイ』「海をわたる言葉 〜翻訳家ふたりの往復書簡〜」の原稿を送る。そして、なんだかよくわからない状況でメンタルクリニック受診。薬が切れると困るので、急いで病院に向かったが、久々になってしまった。とにかく仕事はできてますんで! あとは眠ることができたら大丈夫っす! と宣言して、家に戻る。家に戻る途中でスーパーに立ち寄って食材を買うが、途中でどうでもよくなって、中途半端に買い物を終わらせて家に戻った。
待ちに待った金曜日。フリーランスなので週末もなにもあったものではないが、金曜の夜だけは喜ばしい。
2025/01/18 土曜日
今日は締め切りがない。それだけで私の心は安泰です。
翻訳家、エッセイスト。1970年静岡県生まれ。琵琶湖畔に、夫、双子の息子、ラブラドール・レトリーバーのハリーとともに暮らしながら、雑誌、ウェブ、新聞などに寄稿。
主な著書に『兄の終い』『全員悪人』『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術
』(CCCメディアハウス)、『犬ニモマケズ』『犬(きみ)がいるから』『ハリー、大きな幸せ』『家族』(亜紀書房)、『村井さんちの生活』(新潮社)、 『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』(KADOKAWA)、『ブッシュ妄言録』(二見書房)、『更年期障害だと思ってたら重病だった話』(中央公論新社)など。
主な訳書に『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『ゼロからトースターを作ってみた結果』『黄金州の殺人鬼』『メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語』『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』『捕食者 全米を震撼させた、待ち伏せする連続殺人鬼』など。