秘密光合成

この連載について

その時に咲いていた、その花の花言葉を、最果タヒが詩で見つめ、新たに捉えていく連載です。花を見つめる時、いつもそれらは「私」の人生や生活の断片としてあり、その花に一つの象徴のような言葉を見出すとき、それはいつも人生や生活に重なっていく。その淡さを詩で描けたらと考えています。

第7回

赤ツツジ

2025年6月17日掲載

ツツジ(赤色)の花言葉…恋の喜び


わたし!わたし!わたし!あなた!あなた!あなた!と咲いている。ツツジ。そして私の恋。恋をして私は、消えない火になる。咲く炎になる。一斉に、この緑の庭に私の恋が咲く。きみにあたる日差しのすべては、私のものになる、私の花が、きみのあたる日差しの下でいつも咲き誇っている。どうすれば、きみが抱える花束になれるのか、わからないまま、咲き乱れて、赤い花は、燃えて、燃えて、燃えて、夏そのものになる。きみが、この夏に出会う美しい海と、光と、影のすべてを、私の恋が包んで、きみごと、きみの記憶ごと、まばゆい巨大な花束にする。

――赤ツツジの詩




 ツツジはいつ見てもとても元気に咲いている。私は昔「透明稼業」という曲の作詞をした時に、歌詞にツツジを登場させたけど、それは歌詞の中の世界が、ちょうど「人類の文明が滅び始めた時代」という設定で、そんな時でも変わらずに咲く花といえば、きっとツツジだろうと思ったから。今年も、人類が滅ぼうが滅ばなかろうが関係ないという勢いでツツジは咲いている。わたし!わたし!わたし!あなた!あなた!あなた!という勢いの花。赤いツツジの花言葉は「恋の喜び」で、こんなにもしっくりくるものはないなと思う。わたし!あなた!と燃えるような赤い花がぎっしりと咲いて、それ以上の言葉がないのだ。いつまでも、相手を呼び、自分の存在を主張している。
 ピンクのツツジの花言葉は「愛の喜び」らしいと知って、愛と恋は何が違うんだろうなぁと、なかなか考える機会のないことをじっと考えてしまった。明らかにその二つは違うけれど、でも、はっきりと区別をつけるように定義することは難しい。どちらも互いに憧れて、憧れることでしかその差を見出すことができない。きっと。
 恋は、差し出す花束ではないなと私は思ったんです。もちろんツツジを贈る人もいるのだろうけど。それでも、真っ赤なツツジのあの燃え盛る姿は、街中で緑を赤で上塗りするようにごうごうと咲いているのがとても「らしい」。それこそが恋なのだろうと思う。それこそが恋で、それもまた、ひとつの、世界丸ごとを差し出すような大きな大きな花束となりうるのだ。夏の始まりの光を吸い、燃え盛って、燃え盛って、夏そのものをその赤さで始める。きみが出会う夏の美しさすべてを、きみへの花束として贈りたい! 赤い花が願う花束の形。恋が願う、愛の形。わたし!わたし!わたし!あなた!あなた!あなた!夏の始まりにふさわしい、恋が恋であることを喜び抜く花。

著者プロフィール
最果タヒ

詩人。中原中也賞・現代詩花椿賞。最新詩集『愛の縫い目はここ』、清川あさみとの共著『千年後の百人一首』が発売中。その他の詩集に『死んでしまう系のぼくらに』『空が分裂する』などがあり、2017年5月に詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が映画化された。また、小説に『星か獣になる季節』、エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』などがある。