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無邪気に「モテ」を追求できない時代に、生き延びるには──『まだまだ大人になれません』刊行記念トークイベント ダイジェスト
ひらりさ×穂村弘
2026年1月16日掲載
まだまだ大人になれません

まだまだ大人になれません

ひらりさ

大和書房

2025年11月にエッセイ集『まだまだ大人になれません』(大和書房)を刊行したひらりささん。結婚や出産のようなステップが必ずしも成熟や幸福を保証しない世の中で、「大人」になるにはどうしたらいいのか?をテーマに、36歳独身であるひらりさ自身の試行錯誤を正直につづった、現在進行形の”メンタルリカバリー”エッセイです。

そんな本書の刊行記念イベントが、下北沢の本屋B&Bで2025年12月27日に開催されました。ゲストは、歌人でエッセイストとしても活躍する穂村弘さん。実は二人は、ひらりささんが学生時代に一度「出会って」いるのだとか。ひらりささんが、16年ぶりの再会を果たした穂村さんと語り合ったことは…?


だいわlogではハイライトをお届けします。

”どうですか人生。

どうなんだ、私の人生。

『まだまだ大人になれません』は、自分このままでいいのかな〜と思いつつ生きちゃっている文筆家が、自分の大人げなさを開示しつつ「昨日よりは大人になれたかも」と思えた出来事や、そのヒントをお届けするエッセイ本です。”

そんな赤裸々な語りかけから始まるエッセイ集『まだまだ大人になれません』。著者であり、文筆家のひらりささんが、本書の刊行記念イベントで穂村弘さんとぜひ話したい!と思ったのは、文章を書く上で大いに影響を受けた存在が、穂村さんだったからだそう。

学生時代に所属していた新聞サークルで穂村さんを取材したことがあるというひらりささん。イベント当日はひらりささんが、2009年の取材当時に穂村さんに書いてもらったという色紙を持参、歓声が上がりました。

■ より善く生きようとする姿勢の強さ

『まだまだ大人になれません』の感想を問われた穂村さんは、「より”善く生きよう”というドライブの強さに感動を覚えた」と語ります。穂村さん自身が特に食らった箇所として、ルッキズムにまつわる屈託を吐露した収録エッセイ「りんご農家か人間以外」の一節を引用しました。

穂村:僕なんかの時代、もしくは僕なんかとは全然レベルが違っていて。こういう一節があるんだけど……。“「他人からどうこう言われるとか気にしてない角度の決め顔ではない写真をプロフィールに使っている中年男性の書き手」とかのほうが、お前らはずっと気楽でいいなと思ってしまう”っていう恐ろしい一節があるんだけど、あ、これは僕だって思ったのね。つまり、“より善く生きたい”っていう動機は僕だって持ってるんだけど、その舞台というか戦場になっている場所の位相がもう全然違ってる。

続けて、「昔自分のエッセイや短歌を読んでいたという人に会うと、みんな強い人になっているから、怒られるんじゃないかとビクビクする」「オファーをもらうと本当にホッとするよ」「過去の間違いを正しに来られることもあるんですけどね」と話す穂村さん。そんな穂村さんに対して「ある意味では『あ、大人ってこんなふうに生きていいんだ』という穂村さんの感じが、現在、”強い女たち”を出現させているんじゃないでしょうか?」と、ひらりささんがフォローする場面もありました。

■「モテ」と「大義」が世代を分けている?

「大人」に関するトピックを掘り下げた二人の対話は、「エッセイを書く」ことに及びます。ひらりささんと同じく会社員・作家の兼業生活を長く続け、42歳のときに会社を辞めた穂村さん。

ひらりさ:それでいうと穂村さんは、歌人として独立というか、会社をやめられてから大人になったなって感じがあった?

穂村:いや。幸せにはなりましたけどね。会社にいる間ずっと苦しかった。やめて、思う存分眠ってみたいと思ってすごく眠ったのを覚えてますね。片道1時間45分の通勤でやっぱもうそれだけで限界。満員電車に1時間45分乗って帰り夜中に同じ時間で帰るっていうのは結構もう無理。

ひらりさ:電車って、すごい人間性を奪いますよね。

穂村:満員電車って、満員ってことは、自分以外もぎっしり同じ状態のわけですよね。それでこの中で絶叫してしまうとしたら自分だなっていう感じがすごいして。もし誰か一人でも先に、アアーーーッて言ってくれれば、自分だけじゃなかったってなるのに、誰もその気配がないってのが真実だから、本当にみんななんでこんなことが平気なんだ、おかしいだろこんなのっていう気持ちがずっとあった。

穂村さんにとっては「書くこと」に出会うまでが苦しかったそうで、エッセイを書くことを「自分の反社会性や非社会性を社会化する、サバイバルするための『錬金術』」だと表現します。

さらに飛び出したキーワードが「モテ」。穂村さんは、「もっと”モテ”る文章を書きたいのに……」と語るひらりささんに、ひらりささんや若い世代の書き手たちには「大義」があって羨ましいと反論します。

果たして、「モテと大義」にまつわる議論の行方は……?

対談の全編は、現在アーカイブ配信として販売中です。

*2026年3月28日(土)までの販売となります。

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 世代のギャップ、社会の重圧、そして表現を通じたサバイバル術について深く語り合った全編を、ぜひこの機会にご覧ください。

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