2025/03/15-2025/03/31
2025/03/15 土曜日
東京。朝早くの新幹線にて移動。今日は読売新聞本社内のよみうりカルチャーでカータンとのトークショー。カータンとご一緒させて頂くのは二度目になる。相変わらず、明るく、きれいで、素敵な人だ。カータンはとても話が上手なので、一緒に話していて安心できる。『義父母の介護』担当編集者で新潮社の金さんが来てくれていた。イベントが無事終了して、カータンとカータンのご友人二人と食事へ。楽しい話をいっぱい聞いた。
宿泊したのは東京駅ド真ん前のホテルで、夜景がとても美しかった。随分前に予約したのだが、予約した時点で私のなかの何かがおかしかったらしく、めちゃ広い部屋だった。いいのか、一人でこんな部屋に宿泊しても……と思う程度に広かったが、人間いつ死ぬかわからないので、こんな東京のホテルの広い部屋で一人、ゆっくりするのも悪くないわと思いつつ、TikTok見てゲラゲラ笑って寝た。こうなるともう、開き直りだな。
2025/03/16 日曜日
昨日のトークショーは、十分家まで戻ることができる時間に終了したものの、一泊した。その理由は今日、友人のよっちゃんとランチするため。よっちゃんが、大変ゴージャスな飲茶と点心のお店を予約してくれており、久々のお喋りを楽しんだのだが、よっちゃん、飲むからさ!! ガンガン飲むから! 昼なのにシャンパン飲むわ、ワイン飲むわ、すごいから。二杯目の白ワインをくいっと飲みつつ、ソムリエ(?)の男性をじろっと見て、「彼、ようやく本気出してきたわね」と言ったときのよっちゃんの迫力、ずっと忘れないよ。その店を出て次のバーになだれ込み、新幹線に乗って京都まで移動、家に帰った。
2025/03/17 月曜日
朝から忙しく掃除などした。が、しかし、実は明日も東京なのだ(連泊しようか随分悩んだが、一度戻った。テオの様子が心配だったから)。『兄の終い』を原作とした映画が完成したので担当編集者と見に行くことになっている。タイトルは『兄を持ち運べるサイズに』になった。中野量太監督が、このフレーズを選んだという。
このフレーズは本のなかにもあるし、帯にも印刷されたし、私が実際に頭のなかで何度も繰り返したもの。突然死した兄は背が高く、とにかく体の大きな人だったので、塩釜警察署の刑事に「迎えに来て下さい」と言われた瞬間、「えっ、あんなにデカい人を!?」って困惑して、この切羽詰まったセリフが出てしまったというわけ。
昨日戻ったばかりだが、また明日の荷造りをして一日が過ぎた。最近は何かを作って冷蔵庫の中に置いていくなんてことはしない。息子たちにはそれぞれPayPay経由でごはん代を送っておいた。
2025/03/18 火曜日
東京。試写会。早い時間に担当編集者と池袋駅で待ち合わせた。
自分が書いた本が映画化されるなんて経験は、なかなか珍しいと思うので緊張しつつ、東映東京撮影所に向かった。こんな日が来るなんて、20年ぐらい前の私に言ってあげたい。あなた、今はブッシュを追いかけていますが、将来、書いた本が映画化されますよってね。絶対に信じないと思うわ。
私を演じて下さったのは柴咲コウさん、兄役はオダギリジョーさん、加奈子役は満島ひかりさん。豪華過ぎて震える。子役の青山姫乃さん、味元耀大さんの演技も素晴らしかった。
慣れない場所で緊張しつつ、映画制作関係者のみなさんと一緒に完成した映画を観た。村井、まさかの号泣だった。横に座っていた担当編集者も大号泣。多賀城の懐かしい場所がたくさん出て来た。あり得ないことなのに、オダギリジョーさんが兄ちゃんに見えた。
映画を見終わってから、今度はCEメディアハウスに移動し、監督と対談。中野量太監督とは何度かお会いしているが、とても感じが良くて素敵な方だ。中野監督でよかったなあ、兄ちゃん。
対談が終わり、担当編集者とCEメディアハウス近くのバルに移動して、祝杯をあげた。映画化が決まってから数年経過したが、ようやく大きな仕事が終わったような気持ちだった(私は特に何もしていないが)。この日も東京に宿泊。前回と同じホテルだ。一人で大都会のホテルの部屋にいると、これは現実なのかと少し不思議な気持ちになる。私も大人になったなあなどと考えた。
2025/03/19 水曜日
早い時間に滋賀に戻った。実は、明日から名古屋、博多と移動なのだ。どれだけ忙しいの……。こんなの初めて。家にようやく到着して、旅先から送っておいた荷物を開梱し、洗濯し、冷蔵庫の中身をチェックして……などしていたら、あっという間に一日が過ぎる。明日から出張だ。気合いを入れる。
2025/03/20 木曜日
朝早く名古屋に移動。今日はCBCラジオの北野誠さんの番組に出た。3時間の生放送だ。新幹線に乗りながら、「私は本当に大丈夫なのか」と若干不安があったのだが、北野さんはとても明るく、感じのいい方で、クルミッ子やら野菜を下さった。優しい! 3時間にわたって、少しの休憩を挟みながら、義父母の介護の状況についてお話しさせて頂いた。終了したのが午後の4時頃。そこから博多へ移動。信じらんなーい。
明日、博多のとらきつねでトークショーがある。とらきつねは二度目になる。鳥羽さんにお会いするのがとても楽しみだ(私は鳥羽さんのファンだ)。トークショーでは、古賀及子さん、こだまさん、牟田都子さんとご一緒する。メンバーのクセが強すぎて時空が歪むと噂されているトークショーなので、心して挑みたいと思う。暗くなった時間にようやく博多に到着。福岡にふるさと納税をして部屋をグレードアップしてもらったため、だだっ広い部屋で一人、ラジオに3時間出演してから博多まで移動した自分を褒める。TikTokを見て寝た。
2025/03/21 金曜日
今日はとらきつねでトークショーだが、開始まで時間があるのでなぜだかショッピングに出てしまった。買わなくてもいいのに、博多のロクシタンで鬼買いしてしまう。京都駅にもあるじゃないか、ロクシタンは! ロクシタン以外にも色々と買ってしまったので、ホテルのフロントに行き、発送用のダンボールをもらってきた。買ったものをすべてダンボールの中に入れ、明日はスッピンの上に手ぶらで帰るつもりだ(化粧品まですべて梱包して送ってしまう)。
夕方、とらきつねに移動。久しぶりの鳥羽さんはニコニコされていた。古賀さんは初めて。明るくて話しやすい素敵な人。こだまさんは二回目。相変わらず面白い。牟田さんはいつもの通り。「都子ちゃん、オッス」で挨拶は終わる。クロワッサンの遠藤さんも駆けつけてくれ、お土産を渡してくれたが、「これから大阪に行く」と言い、突如として去った。相変わらず面白い。
トークショーが終わり、鳥羽さんに不思議な店に連れて行ってもらった。大根餅が美味しかった。ホテルに戻り、ここ二週間ぐらいの忙しさを回想しつつ、寝た。
2025/03/22 土曜日
お昼ごろに京都到着。そのまま帰るのもなんなんで、伊勢丹に寄ってしまい、思わず爆買い。稼いだ分をすべて使ってしまうクセを治したいが、私の中のもう一人の私が、そんな小さなことを気にするなと言う。そうだ、自分だって大切なんだ。自分が喜ぶことをせずに、仕事なんてやってらんないよ! などと考えていたのに、買ったものはすべて家族へのお土産。人はこの呪縛を愛と呼ぶのか。しらんけど。
久しぶりに息子たちとちゃんと会って、この子たち、いつの間にこんな大人になったんだろうと不思議な気持ちになる。かあさん、がんばって働いたよ。
2025/03/23 日曜日
伊勢丹の仙太郎で買ったお菓子を持って夫の実家に行ってきた。義父は甘い物が大好きなので、うまいうまいと言って食べていた。どこで買ってきたんやと言うので、京都のデパートだよ、私、この一週間ぐらい、東京行ったり名古屋行ったり、博多行ったりして大変だったんだよと言うと、ふぅんとべつに関心もなさそうだった。大福を奪ってやろうかと思ったが、いやいや、これも親孝行とぐっと我慢。義母は相変わらずで、ニコニコ明るいが、羊羹に醤油をたっぷりかけるあたり、アグレッシブで良い。
2025/03/24 月曜日
本当に久しぶりの、何もない日。旅先から送った大きなダンボールが届いたので、中の荷物を洗濯したり、お土産を息子たちに渡したりした。疲れが溜まっているので、午後は一人で映画を観ながら寝ていた。
2025/03/25 火曜日
午後から、岸田奈美さんとzoom。29日に京都でトークショーがあるのだ。岸田さんとは実は初めてで、トークショーでお会いする前に打ち合わせということで、今日のzoom会議となったわけだが、岸田さんは話が上手だわ! スターだわ! 出版界に現れたニューヒロインだわ。トークショーが楽しみ。
2025/03/26 水曜日
月刊『清流』締め切り。朝の6時からせっせと書く。文章は朝イチに書くのが私には合っているようで、あまり疲れていない時間帯に書ききってしまうほうが出来上がりが良いような気がする。作業を前倒しでやっておくと、夕方以降が楽だ。午後の1時から3時あたりまで調子が悪いので、その時間帯を単純作業に当てるようになった。一日がうまく回るような気がする。今日はテオがスクールに行っている日なので、余計に作業が捗った。
2025/03/27 木曜日
心臓血管外科の定期検診。心不全が起きているときは胸水が溜まるので、胸部レントゲンを見ればすぐにわかるらしいが、まったく異常がないということだった。かなりハードなスケジュールをこなした数週間だったが、術後かなりの時間が経過してもこの状態でいられることに感謝するしかない。
2025/03/28 金曜日
メンタルクリニック。出張ラッシュは終わったが、病院ラッシュが始まったような気分だ。眠剤があまり効かなくなってきた実感があって、「ちょっと最近、効きが鈍ったというか、あまり効いていないというか……」と先生に言ったら、じゃあ別のを出してみましょうということで薬が変わった。飲んでみたら、寝るというよりは「落ちる」に近かった。途端に気持ちが明るくなる。眠剤を処方されると、うれしくて鼻歌が出てしまう。眠剤を処方されている人だったら、この気持ちがわかるのではないだろうか。
2025/03/29 土曜日
岸田奈美さんと京都でイベント。生奈美ちゃんはかわいい。それを強調したい。そしてトークが抜群に上手だ。周囲の様子を見て、その都度判断してトークの方向性を変えていくのがすごい。私なんて、相当楽をさせて頂いて、申し訳ないくらいだった。トークショーが無事終わり、また会いましょうと約束して、別れた。
奈美さんと別れた私はまっすぐ大丸京都店へ。爆買い女の突撃が始まりだ。早い時間に戻りたかったため、すごい勢いで惣菜や酒や寿司や肉を買って、素早く京都駅に戻って電車に乗ったのだが、途中次男からラインが入った。義母が顔に大けがをして病院に運ばれたらしい。ちょうど、病院の最寄り駅の手前の駅を過ぎたあたりだったので、次の最寄り駅で降りて病院まで急いで向かったが、途中で、大丸で購入したものすべてをどこかに置き忘れたことに気づいて愕然。
義母は庭で転んで、義父自慢の庭石に顔をしたたかにぶつけて、7センチも切る大けがだった。深さは1センチ。内出血も酷く、髪は血で固まっていた。いやあ、本当に色々ある。激動の日々だ。
2025/03/30 日曜日
虚無。
2025/03/31 月曜日
洗濯物を大量に洗う。部屋を片づける。冷蔵庫の整理をする。それだけで午前中が終わった。午後は翻訳をした。しばらく作業ができなかったので、とにかく一文字でも多く訳しておかねばと焦っての作業。4月は出張はないが、締め切りが多い。スケジュールを見て、しばしソファに突っ伏した。
翻訳家、エッセイスト。1970年静岡県生まれ。琵琶湖畔に、夫、双子の息子、ラブラドール・レトリーバーのハリーとともに暮らしながら、雑誌、ウェブ、新聞などに寄稿。
主な著書に『兄の終い』『全員悪人』『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術
』(CCCメディアハウス)、『犬ニモマケズ』『犬(きみ)がいるから』『ハリー、大きな幸せ』『家族』(亜紀書房)、『村井さんちの生活』(新潮社)、 『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』(KADOKAWA)、『ブッシュ妄言録』(二見書房)、『更年期障害だと思ってたら重病だった話』(中央公論新社)など。
主な訳書に『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『ゼロからトースターを作ってみた結果』『黄金州の殺人鬼』『メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語』『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』『捕食者 全米を震撼させた、待ち伏せする連続殺人鬼』など。