2025年「R-1グランプリ」で、史上最年少優勝を果たした友田オレが紡ぐ初のエッセイ。幅広い歌・音ネタを持つ友田が、人から言われて何か残っちゃう言葉、電車で耳にした奇妙な会話、変な生活音……様々な「耳に残っちゃうモノ」から日常に揺さぶりをかける。
ネタ中に聞こえてくるモノ
先日、「芸人がネタを披露した後、芸人とお客さんが一緒に謎解きをする」というライブに出演した。謎解きの問題のレベルが高過ぎて、初心者の私は全く歯が立たなかった。
こういう工夫を凝らしたイベントに出る度、今の東京のエンタメはここまで来ているよと実家の父親に伝えたくなる。
会場はLIONの本社ビルの一室。どうしてLIONなのか、確かスポンサーが云々とかだったが忘れた。会場もさることながら、出演者の並びも不思議だった。M-1の敗者復活戦を翌日に控えたおおぞらモードさん、ネコニスズさん、そして歌ネタ芸人のグータン森山さん、ヒガ2000さん、友田オレ。歌ネタをするピン芸人が3組いることを出番の冒頭で「一つ目の謎」と言ったら、最前列に座る謎解きファンと思しき女性が納得の笑みを浮かべた。
さて、我々歌ネタ芸人には永遠のテーマがある。それは「予測不能な客席からの手拍子」である。普段ライブハウスでやるようなお笑いライブであれば、手拍子はまず起こらない。
それはおそらく笑うことが目的だから。一方で、営業や企業イベントでは十中八九手拍子が起こる。それはお笑いが「催し物」として大きく括られ、楽しむことが目的になるから。
人や環境が変われば見方も変わるという事象は大変興味深い。
ハリセンボン春菜さんの「〇〇じゃねーよ!」も、以前ショッピングモールの営業で見学した際、コンサートのフィナーレのような拍手喝采を受けていて、カルチャーショックを受けたことを覚えている。お客さんの無茶振りに快く答える春菜さん、そしてそれを優しい眼差しで見つめるはるかさん、渋かったなぁ。
漫才師やコント師の中には、ネタ中に手拍子や野次など、第三者によるネタへの過度な関与を迷惑に思う人もいる。会話のリズムがちぐはぐになったり、ネタの世界観が崩れたりする恐れがあるからだ。その点歌ネタ芸人は、少なくとも私は、手拍子や野次に寛容である。
理由はただ一つ。「盛り上がってる感」を演出できるからだ。もちろん笑ってもらうことが最大の望みではあるが、現実はそう甘くはない。以前秋田の公民館でネタをやった時、お客さんの半数以上がお年寄りだった。私の知名度は壊滅的で、最初マジシャンかと思われていた。そういう時は決まって、歌い出してすぐに手拍子を求めるようにしている。
新人演歌歌手として立ち振る舞い、最後まで押し通すのである。この事案は極端だが、要するに歌ネタというのは、「お笑い」にも「催し物」にもなり得る、実にフレキシブルな演芸なのである。
そして今回の謎解きライブはどうだったか。こういう場合は本当に予測不能だ。
お笑いファンもいれば謎解きファンもいる。それにステージは、会議室に小高い足場を広げ、その両端についたてを置いただけの簡易的なもので、さしずめセミナーのような雰囲気。曖昧な位置づけのイベントである。そしてついに私の出番。アップテンポなロック調の曲が流れ出すと、お客さんはすぐに手拍子を始めた。思ったより早くて面食らった。
体感、二拍目くらいで叩いてくれた。その後も曲が終わるまでずっと丁寧に拍子を取ってもらった。ありがたい限りである。また、見る限り純粋にお笑いとしても楽しんでくれていたようだったし、なぜかネタ中に一回だけ感嘆の「オ〜」があった。謎解きファンはきっと細かいところまで楽しむ習慣が染み付いているのだろう。
これまでに出会ったことのない素敵なお客さんに巡り会えた日だった。
ともだ・おれ
2001年福岡県生まれ。早稲田大学お笑い工房LUDO 22期出身。歌とフリップネタを合わせた独特のネタが評判を呼び、単独ライブはチケット即完売。デビュー10ヶ月で「第44回 ABCお笑いグランプリ」決勝に進出、大学在学中には「UNDER 25 OWARAI CHAMPIONSHIP」決勝、2023年M-1グランプリ準々決勝、2024年R-1グランプリ準々決勝に進出。2025年「R-1グランプリ」で史上最年少・最短芸歴での優勝を果たした。


