本が手元にないと困るのです。例えばお風呂、歯磨き中、はたまたトイレでも読書せずにはいられない。
そんな私がひょんなことから書店員になりました。書店員って落ち着いたイメージでしたが、なってみたら全然違う! 日々、思いもよらぬ問合せに大わらわ!!
そんな書店員の日々、ちょっとのぞいてみませんか? 読めばあなたも書店に行きたくなるかもしれません。
※ 実際のエピソードから、個人を特定されないよう一部設定を変更しております。
平成という、パワフルで切なくて、エモい時代。
うわマジか。
コミックスに付ける特典を見て、つい声が出てしまいました。
特典の文言は、『平成レトロステッカー』。ちょっと待ってくれよ。レトロときたら、昭和か大正にかかる言葉じゃないの?
手の中のステッカーは、文字といい、キラキラ感といい、確かにめちゃくちゃ“平成み“を感じます。つい先日まで平成だと思っていたのに、これがレトロになってしまうなんて……!
平成を生きて大人になった私(昭和後半生まれ)としては、衝撃的な出来事でございましたが、このステッカーを手に取った令和の若者たちは「懐かしい!!」「小学生の時にこの感じ流行ってたよね!」などと言い合い、非常に好評。
時代は確実に流れている……!!
強烈に感じた出来事でした。
このステッカー以降、書店にはちょくちょく平成の風を運ぶ商品が入荷してきます。
最近話題になったものでは、日焼けしたキティちゃんが付録の雑誌!
我らが共に歩んできたキティちゃんとあって、予約が殺到。当店では、ほぼ予約で埋まってしまい、数冊だけ店頭に出たものの、朝のうちに完売しました。そりゃーそうよ、平成ギャルたちがキティちゃんにかける思いを舐めたらいかん。
その後、お問合せのたびに「申し訳ございません。完売いたしました……」と頭を下げています。
「やっぱり無いんですね。ワンチャンあるかと思ったんですけど……」とおっしゃるお客さまに、
「実は私も欲しかったんですけど、あっという間に無くなってしまって……」と言うと、「店員さんすら買えないなら諦めがつきます!」と笑う、同世代のお客さま。
「懐かしいですよねぇ、日焼けしたキティちゃん」と言うと、「私たちの時代は、キティちゃんも頭にハイビスカス着けてましたよね!」と返ってきます。
「着けてたーー! 懐かしいですね!」
「店員さんも同年代ですよね、ルーズソックスでしたか?」「もちろん! スーパールーズにソックタッチです」「ダボダボのカーディガンにミニスカートですよね!」「膝上20センチでしたね」「もし今、娘が同じ格好するって言ったら、スカート丈が短すぎて心配になりますよね(笑)」
平成を青春時代として生きた者同士、話が盛り上がります。
いやー懐かしいわ、ラルフローレンのダボダボカーディガンにバーバリーチェックのマフラー。
お話を伺うと、どうやらお子さんもうちの娘と同世代のようで……。娘さんは最近、「平成の空気が感じられるような本を読んでみたい」と言っているんだとか。
ふむ、平成を感じる本ね。
あるよ!(平成を彩る、某人気ドラマに登場する店主の決め台詞)
お客さまは、私が「やはりまずはこれ」と紹介した小説を手にして「うわー! 懐かしい!」と声をあげました。
誰もが夢中になったこのシリーズ、実は今月、最新刊が出るのです。
ずっと池袋にいてくれるマコっちゃんの近況を、ぜひお家でゆっくり楽しんでいただきたい。お客さまは、店頭にあったもののほかに、「最新刊も買いにきます!」と約束してくださいました。
お母さん用には、私も大好きな漫画をご紹介。私たちが若いころに大流行した漫画の後日譚です。破天荒な主人公も私たちと同じだけ歳を重ねました。
「就職難だったし、経済も低迷していたのに、私たちの青春時代はすごくパワフルでしたよね」と私が言うと、お客さまは「ほんとそう。楽しかったですよね!」と笑顔に。
平成がレトロになってしまったことはびっくりだけど、若い世代が平成の良さを知ってくれるのは嬉しい。
お客さまとお話ししている時、私の心が少しだけ、ルーズソックスを履いている頃に戻ったのを感じました。
楽しかったなぁ、平成!!
【お客さまにおすすめした本】
『神の呪われた子 池袋ウエストゲートパークXIX』
石田衣良/文藝春秋

IWGPシリーズに夢中になった皆さん! 文庫の最新刊が発売していますよ~!
先ほどふと調べてみたら第一作の発売から27年も経っていて、動揺を隠せません。そりゃコギャルもおばさんになるわ……。宗教2世をテーマにした表題作含め、4篇。あっという間の読書タイムを保証します! 今月、単行本の最新刊も出るよ!
『後ハッピーマニア(1)』
安野モヨコ/祥伝社

私の平成は、安野モヨコ先生によって彩られたと言っても過言ではないわけでして。
破天荒に幸せを追い求めたシゲタも、いまや中年。タカハシと結婚し、穏やかな日々……と思いきや、離婚を突き付けられ? 40半ばになっても人生は全く思い通りにならない。私と同じおばさんになったシゲタを、あの頃と同じように応援しています。
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第1話いつか子どもと繋いだ手を離すのだから。
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第2話誰かと一緒にごはんを食べる幸せについて。
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第3話いくつになってもきれいになる努力をする権利はあるのだ。
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第4話世界一素敵なプレゼント
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第5話25年振りの、夫婦水入らず
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第6話新しい年は、少しだけ新しい自分で。
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第7話大人のダイエットは、健康ありきなのである。
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第8話宿題やったか?お風呂入れよ、歯磨けよ!…終わった? よし、ミステリの世界へ行ってらっしゃい!
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第9話うちの店長は声がでかい。
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第10話ある書店員の平凡な一日。
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第11話お求めの本が見つからない日だってあるのです。
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第12話大切な人の親に会いに行くなら。
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第13話離れて暮らすことになる父の健康を願って。
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第14話古い友人との再会
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第15話うちの店の仕事ができるアイドルの話。
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第16話夫に「大好き」って言えますか?
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第17話直接伝えられないけれど、あなたに読んでほしいのです。
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第18話ふたりで作る、新しい食卓。
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第19話お酒と本が大好きなのです。
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第20話天国にいる、大好きな君へ。
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第21話私にとっては大賞なんですが。
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第22話こんな自分でオッケーなんです。
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第23話平成という、パワフルで切なくて、エモい時代。
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第24話あの日のお客さまに伝えたい「絶対無くさないからね!」
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第25話いい大人ですが名刺交換がうまくできません。
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第26話楽に働くって、どういうこと?
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第27話最近、押しが出来まして。
1981年茨城県生まれ。書店員。転勤族の夫とともに引っ越しをくり返している。現在は、夫、息子、娘、犬1匹、猫4匹と暮らしながら、東京の片隅の書店に勤務中。
初めての著者に、『書店員は見た!〜本屋さんで起こる小さなドラマ』(大和書房)がある。

