コアラ日記

この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第13回

8月の日記(前半)

2023年11月15日掲載

8/1

ジムへゆき、夕方グラフィック社にて王子エフテックスさんたちと夏のご挨拶。

長くお世話になった富士工場の5号マシンの後藤さんが退職とのことで、工場の変遷のお話をきいたり。

ひさしぶりに大島依提亜さんにも会えた。

ちなみに5号マシンではポルカシリーズも抄造されています。

行ったついでに『宇野亜喜良ポストカードブック』の色校も見る。

8/2

ピーターラビットのラフ。もう17巻と18巻。

テレビ朝日にて、長めの打ち合わせ。(まだ書けない)

帰りに小学館へ。

エネルギーをすごく使い、帰ってからお昼寝をした。

8/3

斉藤倫さん『探検家学園3』入稿。

シリーズものは楽ちんなような気がするけれど、実はそうでもないのであった。

夜、チュンコ先生と、水鈴社・篠原さんと、焼き鳥を食べる。

チュンコ先生は最近誕生日だったので、花を買っていく。

FUGAというお花屋さんは好きな花を抜いて持っていき、まとめてもらうスタイルができるので、楽しい。

チュンコ先生のイメージで、ひみつの素敵な野原でたくさん摘んできたよ!

みたいなセレクトにしてみる。

まとめてくれる店員さんに「こういうのもいいですね」と、やさしく言われる。

(お店の雰囲気はもっとソリッドな花束のイメージなのです)

花を買うのがとても好きだが、おまかせにしたときに、(自分の好みとは違う)がっかりな組み合わせだと、とてもつらい。

ひとつひとつはすてきな花たちが…そっとすてきをしまってしまう感じ…。

伝え方が下手だったのか…などくよくよしてしまう。

そういう花屋さんはだんだんわたしの中で淘汰されてゆく。

8/4

ほぼ自宅。夕方、自転車でTrippenさんへ行き、

ひさしぶりに三好さん、いずみさん、中村さんたちとお話をして楽しかった!

Trippenは長く愛用もしているけれど(初めて買ったのはドイツ!)、MUM & GYPSYつながりで演劇のお仕事もしたので、面識があるのでした。

『紛争地の看護師』(白川優子著)文庫ラフ。

これは単行本も担当していて、ほぼそのままの形で文庫に。

この方の本を読んでから、「国境なき医師団」のことがよくわかりました。

紛争地で看護師である大変さの中に、現地での暮らしも垣間見えます。

表紙の写真は著者の撮影したもので、屋上に作られたベッドルーム!

8/5

午前中、ナナロク社・村井さんと岡野大嗣さんとカフェ。

「こんど岡野さんの歌集を担当するのに、お会いしたことがない」と村井さんに言ったら、村井さんがちょうど会うので、と引き合わせてくれた。迅速な村井光男…。

とてもおだやかかつ、有用な時間。

8/6

市谷の杜・本と活字館でのトークイベント終わりのチュンコ先生、大島依提亜さんと、DNP佐々木さんと合流して夜ご飯会。

8/7

MOEで13年目(たぶん…)のムーミンダイアリーのラフ。やっと提出…。

新宿高島屋で開催中の「ときめきトゥナイト展」へ。

最終日にすべりこみ。ポスターやチラシなどは担当していたのですが、中身のことはほとんど知らず、図録もデザイナーの成見さんが担当されているので、新鮮な気持ちで原画をたくさん見られました。

子どもの頃に見ていた誌面はしっかり覚えていて、生原稿に思いきり感動…。

想い人が現れる想いが池のアトラクション?では、ダーク・カルロさまが出てきてくださり、うれしい。

夕方からヒグチユウコさんと会って、来年の手帳にいれる絵をいくつか目の前で描いてもらう。

数年前までは、お茶をしながら、彼女が目の前で絵を描いているということがよくあった気もするが、最近はなかなかこんな時間はなく、とてもいいものだ…としみじみ。

出張のお土産に絵の入ったコースターをもらってほくほく。

(わたしは彼女の絵が入ったコースターを収集しているのです)

8/8

蔦屋書店で美味しそうなビールを買って誕生日の人のポストへ届け、扶桑社にて松岡茉優さんの本の打ち合わせ。

まだまだ先だと思っていたのに…近づいている!

停めていた車にもどると、ものすごく暑く、ジュッと背中をつけて幸せになる。

(何度も書くくらい好きなのです)

8/9

午前中、東京ステーションホテルの虎屋さんにて、俵万智さんと角川文化振興財団の編集・住谷さんと、俵さんの新しい歌集『アボカドの種』打ち合わせ。

生菓子がとてもすてきで、それぞれのお菓子を見つめながら、ゆるゆるとお話もさせていただいてよい時間。

『よっちぼっち』(齋藤陽道著)本文組を送る。

夜、『夜を着こなせたなら』(山階基著)のzoom打ち合わせ。

短歌の人、絵の人と、言葉になりにくいようなものを話し合う。

『令和ブルガリアヨーグルト』(宮木あや子著)のイラストのやりとり。

8/10

午前中、岩崎書店にて『きみと風』(夏生さえり作・木下龍也短歌・くまおり純絵)色校。

早川書房へゆき、ピーター色校。

1階の喫茶クリスティにて、『ソース焼きそばの謎』(塩崎省吾著)発売記念の期間限定やきそばを食べる。

とてもとても好きな味! 定番でずっと出してもらいたい。

遠くにいろんなスパイスは感じるのに、親しみやすさもあり、そしてなんかよくわからないけど、おまけみたいなのがいろいろ乗ってるのがおいしい。

小学館へ向かうも、約束の時間には少し早く、ドラルームの今本さんから「オープンしたての1階のドラカフェ行ってください」と言われ、ドラちゃんとドラミちゃんの勉強マーク(小学館のマーク)の入ったカフェラテを飲む。

作ったばかりのSF短編集なども並び、たのしい空間。こちらも期間限定なのがさみしい。

夕方、SPURの打ち合わせで素敵なカフェへ。

とても大人びたかき氷をいただいた…もうこれは、かき氷なのか?と疑念が。

なんだかカフェ巡りの一日だった。

『ブックデザイナー・名久井直子が訪ねる紙ものづくりの現場から』が8年ぶりに増刷!の報せを受けてとてもうれしい!

8/11

とある地域からふるさと納税が届く。

野菜詰め合わせを頼んだはずだが、95%とうもろこしの荷物が届く。

5%は申し訳程度に入っていたインゲン。

大量のとうもろこしを前に、どうしたものかと思い、とりあえず、鉄板メニューの「おかざき真里さんのとうもろこしご飯」を作る。

サイトの写真には、知らない地場野菜などたくさん写っていたのに…という気持ちは拭えない。

8/12

ミヅマアートギャラリーにて近藤聡乃展「ニューヨークで考え中」最終日。

行けてよかった…と心から思った。うつくしい原画たち…。

新宿の映画館にて「君たちはどう生きるか」2回目。

昨日から発売のパンフレットが買いたくて今日にしたが、パンフレットは…買わなくていいかも、と人に言う日々の始まり。

夜、神宮花火大会を見る。

今年はなんだか技術革新を感じた。色の種類はもとより、色の変化や、粒?の形や…新鮮な花火だった。

8/13

チュンコ先生の家にて、100%ORANGE・繭子さんとご飯会。

ひさしぶりにこんにゃくも作る。

冷凍芋からは初めてだったけれど、完璧な出来。

水とほたてカルシウムの分量の正解がわかったような気がする。

今日のおこわは沖縄のジューシー風。とてもおいしい。

合間にビーズでマスコット作り。昭和だ。

繭子さんは、及川賢治さんに「老人ホームみたいだね」と言われてでてきたそうだが

まさにそう、っていうかこういうところならぜひ老後に入りたい。

8/14

朝顔が咲かなくて困っていたのだが、理由がわかったとたん、

毎日たくさん咲くようになる。

(朝顔は暗い時間がしっかりないと咲かないそうで、夜なべの電気が漏れていたことで、朝顔も徹夜になり、咲けなかったようです)

階下の風鈴がとてもよい音。

8/15

白泉社へゆき、『ゆめぎんこう』(コンドウアキ著)色校。もうシリーズ4冊目。

その後税理士さんと打ち合わせ。

『古本食堂』(原田ひ香著)文庫の本文いろいろ。

著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。