コアラ日記

もくじ
この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第44回

11月の日記(後半)

2025年2月28日掲載

11/16

ずっと家。

11/17

ずっと家。

二日連続で一歩も外に出ず家にいることは、年に数回あるかないかなので、とてもうれしい。

11/18

小学館にて村井さんと打ち合わせ。

穂村弘さん『短歌のガチャポン』続編について。

秋になって、車に乗っていると「空が広いなあ」と毎回思う。

そうすると脳内に

「智恵子は東京に空が無いといふ、ほんとの空が見たいといふ。」

という高村光太郎の一節が浮かぶ。

東京に引っ越して来た時、遠くに山がなくて、空が広いなあと思った。山の分、削れてないなあと。

車で、広い道路を運転していると、道路のすごくすごく奥の、ビルとビルの隙間の下に空が見えて、本当に地平線まで空があることがあって、感動する。

「智恵子!ドライブに行こう!すごい広い東京の空を見せてあげるよ」と言いたくなる。

智恵子が見たい空は、山のある空なのは知っているけど、これもいいよ、とすすめたい。

11/19

ジムへ行き、角川春樹事務所・平井さんと文月悠光さんと打ち合わせ。

11/20

友達の猫の訃報。早すぎる。悲しい…。会った時の姿が浮かぶ。

柴崎友香さん『遠くまで歩く』ラフ。

ピーター・ドイグさんの絵を借りることができてうれしい。

扶桑社・八幡さん、ライター水野さん、カメラマン衛藤さんと打ち合わせ。

青森に住む、笹餅を作るおばあさんの本。

夜、B&Bにて鈴木成一さんと寄藤文平さんとトーク。

鈴木成一さんが装丁の学校をされていて、そのキックオフみたいなもの。

三人ともあまりに違って面白かった。

憧れの方々と話せる機会に感謝。

11/21

鈴木俊貴さん『僕には鳥の言葉がわかる』本文いろいろ。

KADOKAWA・佐々木さんと打ち合わせ。

夜、大和板紙さんのオンライントークに大島依提亜さんと参加。

バルキーボール、という前に作った紙の新色を、イデアさんが作ってくれたのでその発売日記念。どんどんいろんな方が新色を作ってくれたら楽しいな。

オンライン上で、ひさしぶりに大阪の大和板紙の工場のヒロリン(岡田さん)とも話せて楽しかった。

11/22

キューライスさん絵本ラフ。

ジムへ。

午後は水戸部功さん、竹尾さんと打ち合わせ。

11/23

(何の記録も記憶もなく、無の一日)

11/24

パレットクラブにて先生。先生をすると、かなり心身が疲れるのだが、ばたばたと夕方から、風間俊介さんと松岡茉優さんの朗読劇へ。

坂元裕二さん作「忘れえぬ 忘れえぬ」。

(あたりまえだけど)松岡さんの声がたくさん聴けて素敵でした。

松岡茉優さんチームである扶桑社・田中さんと金原さんと、薬膳きのこ鍋を堪能して帰宅。

お店の人からキノコが出てくるたびに「頭がよくなるキノコです」とかいろいろ説明を聞いた。

全部どこかに良いやつだった。

一度きりでどうとなることではないだろうが、楽しみだ。

11/25

筑摩書房PR誌「ちくま」入稿。

ヒグチユウコさん毎年恒例MOEカレンダーラフ。2025年はギュスターヴくん。

ちょっとヒグチさんと電話で話し、脱線して、すてきな服の話などできて楽しかった。

数年前は一緒に服を買えるような時間があったのにぜんぜん行けてないね!と。

ひさしぶりに今井昌代さんと会えた。

去年の誕生日プレゼントをやっと渡せた…(ほぼ一年経過)。

髪の毛の色が変わっていてものすごくかわいくてきゅんとした。

今井さんはいつもきちんとしているので、なんとなくわたしもきちんとしていこうと思い、口紅を塗ってみた。

実は先日、これなら塗れるのではないかという色を見つけたのだった。

七五三と、テレビ出演などでメイクさんに塗られたことはあったけど、自分で塗って外にでたのは初めての一日。

これからは、たまに塗れる気がする。

Kちゃんに前にもらった他の色もいけそうな気がする。

左右社・塙さん、イラストレーターの森さんとzoom打ち合わせ。

森さん、なんとくどうれいんさんの仲良しさんだった!びっくり。

11/26

かこさとしさん作、お孫さんである中島加名さん絵の『くらげのパポちゃん』ラフ。

夜、雪舟えまさん『地球の恋人たちの朝食』刊行イベント。

三鷹のuniteさんにて、穂村弘さん、左右社・筒井さんとトーク。

雪舟さんとは2001年に知り合ったので、もう長いものだなあ(穂村さんも同時だけど)。

11/27

車のライトが一箇所切れたので、午前中修理へ。

午後、川上未映子さんとマネージャーさんと打ち合わせ。

来年おもしろいことが起こりそう。

夜、KさんとCICADAでご飯。

11/28

谷川俊太郎さん『祝婚歌』文庫の本文組。

新幹線でチュンコ先生と福井へ(現地集合)。

お館様にもお会いした。

11/29

朝、福井から帰宅。

『ブラック・スワンズ』(イヴ・バビッツ著・山崎まどか訳)本文とそとまわりのラフ。

矢部太郎さんの『光る君絵』本文いろいろ+色校戻し。

11/30

とある美術館にまつわる絵本のラフ。

昼から長嶋有さんのお家へ。

長嶋さんがお住まいのマンションが50周年記念なので、冊子を作るのを手伝った(仕事)。

テキストは、インタビューや年表も含め、すべて長嶋さんが書いており、おもしろ読み物。

インタビュアーなのに醸し出すキャラクター感。

年表は理事会記録から抜き出してきたとのことだけど、ピックアップする人のセンスってあるものだなあと感じた。

ずーーっと座り続け、夜中の1時半にネットの印刷所へ入稿して終了。

へとへとで帰宅。

最近の名久井さん

羽海野チカさんの『3月のライオン』のあとがき漫画に足を向けて眠れない人が多すぎて、倒立して寝るみたいなのがありましたが、そんな感じで、気持ちとしては自転しながら寝ています。

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著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。