コアラ日記

この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第35回

7月の日記(前半)

2024年10月15日掲載

7/1

100%ORANGEさんの新作絵本入稿。

Salyuさんアルバムジャケット入稿。

いいことがたくさんあった。

打ち合わせを終え、駐車場にもどり、精算しようとしたら、精算済とでる。

車の近くに行くと、緑のランプも光っている。

いぶかしがりながら車に乗り込もうとしたら

隣のワゴンのおじさまから声をかけられ、

「まちがえて精算しちゃったんだよ!」

「おいくらですか? 払いますよ!」

「1600円だけど、いいよ、あげるよ!」

やさしいひとであった。

キウイを食べようと、まずはキャンペーン用台紙にシールを貼った。

キウイを切ったらなにかがひっかかり、あれ?と思ったらなんとシールが2枚ついていた!

ラッキー!

夜、チュンコ先生とご飯。

7/2

ジムへ行き、ゲンロンへ行って打ち合わせ。

ゲンロンさんには初めて伺った。

居並ぶ本の中に、担当作もいて、うれしい気持ち。

東浩紀さん『観光客の哲学』『訂正可能性の哲学』

星野博美さん『世界は五反田から始まった』です!

打ち合わせした本についてはまだ先になりそうなので、いつかまた。

7/3

朝から、ブルーシープ・草刈さんと打ち合わせ。

なにやら楽しそう。この「楽しそうな空気」を形にしていくのが大変なのだろう、と思う。

キューライスさん『ボンバルボンのおとどけもの』色校を小学館へ戻し、

左右社へ行って『空き箱』色校。

途中、水戸部功さんの事務所へ寄り、そっと物を置いてきた。

7/4

偕成社・丸本さんと打ち合わせ。

かこさとしさんの、パピルスに描かれた絵が飾ってあって、よかった。

夜、小学館・今本さんとご飯。

7/5

ジムへいく。

朝日新聞出版・池谷さんと早見和真さんの新刊打ち合わせ。

夜、『Wピース』(中居正広・劇団ひとり・古市憲寿著)打ち上げ。

古市憲寿さん、テレビ朝日、マガジンハウスが集まって大人数。

古市さんの気遣いっぷりがすばらしかった。

その後、ボリス雑貨店へ行き、ヒグチユウコさんに会う。

「松田ペット」のクッキーをもらった。

ユウコさんが面白い靴を履いていたので、写真に撮った。

7/6

ボリス文庫から出るキューライスさんの漫画『さいしょのQ』作業。

初期のキューさんの作品を集めたもので、しみじみいい。

その後のキューさんの種がつまっているし、

アニメーション作品(DVDがでているのでぜひ観てほしい)に通じるものがある。

水鈴社・篠原さんがフィレンツェにいるというので、わたしの好きな店などを教える。

外国の写真が送られてくるのが本当に大好き。

7/7

ヒグチユウコさんと作っている『ちいさな画集3・4』が届いて、あまりにかわいいので写真を撮る。

アゲハ蝶の幼虫を5匹、一階のレモンの木に運ぶ。

7/8

『感情の海を泳ぎ、言葉と出会う』(荒井裕樹著)ラフ。

水野しずさん歌集本文。

左右社・筒井さんと打ち合わせ。

左右社には(会社のロゴも亀の通り)亀がいるのだが、それがとてもかわいい。

ミモザブックス・照山さんと打ち合わせ。

7/9

東北芸術工科大学の近藤一弥さんの授業にゲストで参加することになり、山形へ。

大学の同級生の進藤やす子さんがイラストレーションの先生をしており、つないでくれたのだった。

近藤さんは舞台関係のお仕事や、「安部公房全集」など、すばらしい装丁にあこがれていたので、

お会いできて本当にうれしかった。

(『藤子・F・不二雄 SF短編コンプリートワークス 愛蔵版』は「安部公房全集」と、勝井三雄先生が手がけられた池田満寿夫作品集のメタルプレートに影響を受けているので、それもお伝えできてよかった)

ひさしぶりの進藤ちゃんも、ぜんぜん変わってなくて、授業前に学食でランチを食べながら、

「ムサビの学食はみんな床で食べてたけど、ここの学生は行儀いいね」など話した。

授業の前に、高谷廉さんにも久しぶりにばったりお会いしてびっくり。先生をしているそうだ。

授業は、大人数だったけれど、なんだかなごやかで、装丁の課題を見るのも楽しかった。

東北芸術工科大学は、わたしが高校生の頃にできた大学で、東北に美術系の大学ができた!と見学に行ったことが。なんだか感慨深い。

夜は学長の中山ダイスケさん、近藤さん、進藤さん、高谷さん、萩原先生たちとご飯。

風通しのよい学校なのだなと伝わった。

7/10

昼には山形から戻り、ちょこちょこ仕事。

『いわゆる「サザン」について』(小貫信昭著)色校戻しなど。

7/11

『たくさんのふしぎ 11月号 となりにすんでるクマのこと』(菊谷詩子著)レイアウト。

朝から、東武東上線に乗り、初めて降りる高坂駅へ。

埼玉県こども動物自然公園の中にあるビアトリクス・ポター資料館へ、

早川書房・窪木さんと来たのだった。

帰り道、コアラ(全て寝ていた)とヤギだけ見て帰る。

夕方、河出書房・竹花さんとアグラヤ・ヴェテラニー著・松永美穂訳『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』打ち合わせ。

あたらしい掃除機が届く。

7/12

PLAY! MUSEUMで明日からスタートする「オバケ?展」内覧会へ。

祖父江慎さんや、ひさしぶりに会う高田唯くんなど、いろんな方にお会いできた。

祖父江さんの「オバケユ」にそぶちゃんと浸かり楽しかった。

序盤の展示がとても怖く、スッとでてきたスタッフさんがおばけに見えて、

思わず悲鳴をあげてしまった。

7/13

『いわゆる「サザン」について』修正など。

7/14

パレットクラブにて授業。

終わった後、豊洲のSPBSへ。

穂村弘さん、ナナロク社・村井さん、左右社・筒井さんの短歌トークを聴きにいく。

打ち上げご飯にも参加。枡野浩一さんやら、歌人ばっかり!

7/15

ずっと家。

最近の名久井さん

あっという間に秋…? びっくりです。

著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。