コアラ日記

もくじ
この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第49回

2月の日記(前半)

2025年5月15日掲載

2/1

今年もGoogleカレンダーに「めかぶがでたら買うこと」と表示された(毎年くりかえし設定)。

夕方からパレットクラブで先生。

2/2

夢に久しぶりに夢の両親が現れた。

(子どものころから、夢の中にでてくる親は現実とは違う人なのです)

2/3

ちょっと机の上を片付けたら、昨日までの個展のご案内を見つけ、それは心から行きたい展示だったので、本当に自分がいやになった。

(これが一年に何回もある)

鈴木俊貴さん『僕には鳥の言葉がわかる』帯入稿をしたり、さよなら国際ビル冊子の戻しをしたり、大倉トーイ本の入稿をしたり。

2/4

『笹餅おばあちゃんの 手でつくる暮らし』校了。

井戸川射子さん『移動そのもの』ラフ。

2/5

矢部太郎さん『楽屋のトナくん』ラフ。

ヒグチユウコさんのMOE連載「日々の綿」ラフ。

河出書房新社・竹花さんと『人形のアルファベット』打ち合わせ。

なんだかいろんなことにつかれ、小学館・今本さんを召喚してご飯。

2/6

朝、いきなりドア前のインターホンが鳴り(オートロックのマンションなので、稀有なこと)、インターホン工事、今日していいですか、とのこと。

インターホン老朽化により、全戸、インターホンを新しくすることになっているのだ。

土曜の予定だったけど、時間が空いちゃったから、とのこと。

着替えもしていないので、30分待ってもらって入ってもらう。

「昨日も午前中はサクサクいける部屋だったんだけど、午後は難物が多かったんだよね~。今日も午前中サクサクだから怖いね~」

などと話している。

我が家はサクサクな方だったらしく15分で終了。

「今までで一番ラクなお家でしたよ」

「いいですよ、そんなお世辞」

「いや、お世辞抜きですよ」とそんなやりとりをして終了。

井上涼さん『美術でござる』校了。最後に今まで見落としまくっていたものを見つけて、ほっ。

夕方、市谷の杜 本と活字館へ。本文用紙が61種類ももらえる企画展。

ずらりと並ぶ束見本が便利そうでほしかった。

置くところがないので、いらないけど…。

燃え殻さん『この味もまたいつか恋しくなる』本文作業。

2/7

ティモンディ・前田さん『自意識のラストダンス』本文。

ドラえもん全巻セットのボックスラフ。全巻セットはドラえもんの歴史の中ではじめてとのことで、とてもうれしい。超たのしく作業。

『移動そのもの』入稿。

小学館にて村井康司さんたちと穂村弘さん『短歌のガチャポン2』の打ち合わせ。

2/8

左右社・筒井さんの誕生日。

橋本倫史さん『2024年の本部町営市場』作業。

2/9

森下スタジオにて、マームとジプシーの新作「Curtain Call」撮影。

カメラマンは井上佐由紀さん。

たくさんのものを並べて撮影するのは大好きだ。

せっかくなので、わたしのiPhoneで映像も撮影。

2/10

『自意識のラストダンス』ラフ。森瑤子さん『デザートはあなた』入稿。

ピーターラビットの何かの作業。

左右社へ行き、筒井さんと色校。

今日は朝からお花や苺や魚が届き、うれしい日。誕生日なのだった。

いろいろ仕事があったのだが、目覚ましをかけず、いつもより早寝をした(自分への最高のプレゼント)。

2/11

開けてなかった封筒たちを開けたら、海外から届いた本があり、あ、あれだなと思ったら、まったく頼んだ覚えのない、へんな数字絵本が入っていた。

海外の空港のキオスクみたいな店で、子どもの暇つぶし用に売っているような、書き込むタイプの絵本。

これも出会いかと、そのままに。

2/12

チョ・ナムジュさん新刊の本文作業。

河出書房新社・島田さんと打ち合わせ。

夜はNHKエデュケーショナル倉森さんとご飯。

2/13

朝ごはんは苺。

ひさしぶりにヒグチユウコさんとばったり会った。

帰ってきて隙間に猛烈に働き(岡本真帆さん本など)、夕方はAdobeMAXへ。

Adobe・西塚涼子さんと祖父江慎さんのセッションを拝聴。

勉強になった…。

帰り道、祖父江さんと、コズフィッシュのスタッフ・坂口さんのタクシーにずうずうしく同乗。

坂口さんはクリスマスが楽しみ派。

わたしと祖父江さんは年末が楽しみ派(年明けではない)だった。

坂口さんは1976年までのロボットアニメがお好きとのことで、範囲外ではあるけれど、わたしのイチオシロボット、ゴライオンのことを伝えたら、即しらべていた。

どこかで観られるのかなあ…。

ゴライオンは、あまりメジャーじゃないのかもしれないけれど、ちいさい頃のなりたいものの一つに「フローラ姫」がありました。

寝る前にお布団の、あごにあたるあたりに夢のスイッチがあって、「フローラ姫になる夢」「空を飛ぶ夢」など選んでから寝ていたのを思い出す。

2/14

三菱一号館美術館にてビアズリーの内覧会へ。

とてもよかった。つい序盤は、図録を担当していたので色校が合っていたかどうかということに気を取られていたけれど、細部までデータを見ていたのと、現物の刷物や原画をみるのはやはり違うなと痛感する。

年表のあまりの短さ(ほぼ活動は10年)と作品量の多さに、じつと手を見る。

向かいにあったMAISON CACAOが混んでいたのでつい入っていくつかチョコレート購入。

最近このVカットの箱がチョコ界で流行っているなーと思う。

2/15

東京駅に用事があったので、見たいなと思っていた東京ステーションギャラリーの宮脇綾子さんの展示へ。

ものすごく人気のようで、ほぼ女性の二人連れたちで溢れていた。

「こんなの毎日できないわ…」「こんな素敵な日記見たことある?!」と口々に話していて楽しい。

後半の工具の作品の美しさにはっとした。

すばらしい作品群を見ながら、なんとなく、この人はものすごく観察して、形を作っているけれど表現には形そのものだけでなく、光も入った状態で再現されているのではないかと思う。

最近の名久井さん

連休の呪いがまだかかっています。

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著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。