コアラ日記

この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第3回

3月の日記(前半)

2023年6月15日掲載

3/1

朝から藤子・F・不二雄ミュージアムへ。

電車でいくのは久しぶりで、小田急線の登戸駅からドラえもんカラー!

ドラルームの秋山さんと目黒さん、編集の今本さんとSF短編原画展を堪能。

ただいま『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス アルティメットエディション 全10巻』を担当しているので、ぜひとも原画を見たかったのでした。

(書名、長いので、スタッフは「SF短編愛蔵版」と呼んでいます。

「通常版」もあって、そちらは佐々木暁さんの装丁!)

ドラルームというのは、小学館の中にある部署で、その名の通り、ドラえもん(F先生)のことに精通したチーム。

登戸の駅の2階から下をみると、花壇がドラちゃんとドラミちゃんなんですよ、とか展示を見ているときも、特濃のオーディオコメンタリーのようで至福。

展示替えしたら、また一緒にきましょうね、と約束。

カフェでは「流血鬼」のドリンクもいただく。

夕方、ナナロク社・村井さんと『野球短歌』(池松舞著)打ち合わせ。仕様を決定。

ミュージアムでやったガチャポンの、金色のきれいなジャイアンを自慢。

3/2

『五月 その他の短編』(アリ・スミス著 岸本佐知子訳)の色校を見る。

3/3

ミシマ社『一泊なのにこの荷物』(本上まなみ・沢田康彦著)本文もろもろ。

午後、「デザインのひきだし」で創刊号から続けている連載、「本づくりの匠たち」の取材。都内の製本工場へ。

そのあと、グラフィック社・津田さん(a.k.a チュンコ先生)とともに大日本印刷がやっている「市谷の杜 本と活字館」の展示「宇野亜喜良 万華鏡印刷花絮」のプレビューへ。

これは冬に銀座のgggギャラリーでやっていた展示の裏話的な展示で、宇野さんの作品を津田さんが超特殊印刷モリモリで設計・製版をした、その解説版なのです。

津田さん本人から説明を聞いて、「この変態め!」と思う(ほめ)。

3/4

お昼寝をしてしまったりして、のんびり。

3/5

友人のかよちゃん宅で味噌づくり。

何年目だろう。6年くらい? 記憶が曖昧だけど、同じように作っていても毎年出来が違うのがふしぎ。

作業のときに、昨年のお互いの味噌の味見をすると、まったく同じ材料を、半分こにして、かよちゃんは樽に、わたしは壺に入れて一年経つうちに違う味になっている…。

前に料理家の山田英季さんから「味噌を作っている近くで醤油も作ると美味しいのができる」と聞いたので、いつかやってみたい、と思いつつもう3年くらい経過。

3/6

藤崎彩織さん『ざくろちゃん、はじめまして』特装版の函入稿。

桐野夏生さん『とめどなく囁く』文庫の増刷帯をつくる。

実はこの日記は毎日真面目に書いていなくて、Googleカレンダーを遡って、記憶をたぐっているのですが、カレンダーに入れるほどでもない仕事のやりとりは残っておらず、なんだかあまり仕事をしていない人みたいな感じになっているのが気になりはじめました…。

ま、いいか。

3/7

確定申告的ないろいろをやり、夜は講談社のまるちゃんとあんちゃんと赤坂の「コム・ア・ラ・メゾン」でごはん。

2人のいきつけのお店で、おすすめを聞きながらデザートまでおいしく。

3/8

午後、小学館にて藤子先生SF短編愛蔵版打ち合わせ。

家のベランダから見えている遠くのビル、なんだろうとずっと不思議で、携帯電話で撮影して拡大してみる。ロゴがわかったので、検索。

知らない会社で、興味が終了。

3/9

ずっと担当しているアパレル、overlace の冊子入稿。

淡交社・土屋さんと打ち合わせ。

その後ナナロク社・村井さん打ち合わせ。

『野球短歌』の色校を持ってきてくれる。

これは、オペーク白が弱いのではないかと2回刷りを提案。

村井さんは「2回にしても変わんないと思いますけどね」といいつつ、2回刷ることにしてくれる。

『ざくろちゃん~』の特装版のクロス装に使う布の在庫が危ういとのことで代替案を出してみる。

3/10

ジムに行き小学館へ。

小学館へ足繁く通っているが、それはほとんど「SF 短編愛蔵版」の打ち合わせ。

3/11

チュンコ先生夫妻と函館へ。

TK(チュンコ先生のパートナーの愛称)が、まずはラーメン屋さんに連れて行ってくれる。

何か感じないか、と言われ、考えたけど何もわからず。

正解は、巣鴨にあったラーメン蔦(のちに代々木上原へ移転)で修行した方の店だった!

福音館書店で打ち合わせをしたときに、よく寄っていたと話したことをTKは覚えていたのだった。

ふらっと革靴で函館にきたのに、気づけばスキー場へ運ばれていた。

ロープウェイに乗るとのこと。

ざくざくと雪を踏み(わたしたち以外はスキーやスノーボードを持って、重装備の人々)、ロープウェイで頂上へ。雪景色がすばらしく、白樺が続いてゆく。

頂上について、ひょこひょことカフェまで歩き、コーヒーを飲む。

スキーで降りるわけでもないので、またロープウェイで下山。

スキー場のロープウェイ、下山方向は他に誰も人が乗っていない。

道の駅のような、男爵いも発祥の地へゆき、男爵いもとソフ看板の撮影に成功。

わたしはソフトクリームの看板の写真を25年以上撮り続けていて、昔はブログでしたが、いまはInstagramをやっています(@icecream_intheworld)。

大好きな山菜、みずの漬物を購入。

3/12

北海道といえば…という店だが入ったことがないね、と昼ごはんはラッキーピエロ(ソフ看板も大量)へ。

ハンバーガーからカレーからラーメンからなんでもある。

ハンバーガーが美味しかったがアイスコーヒーが LL サイズかと思うような量。

マルセイバターサンドなど鉄板土産を買って帰京。

3/13

『ざくろちゃん~』表紙まわり入稿。

宇野亜喜良さんお誕生日。

もう何年になるだろう。たぶん『宇野亜喜良クロニクル』を作った2014年から毎年お花を贈らせていただいている。

宇野さんはすごくお花が似合うから…。

夕方ミシマ社さん打ち合わせ。三島さんと『一泊なのにこの荷物』のそとまわりのことを。

3/14

粗大ゴミの日だったので、マンションの下まで粗大なものをよちよちと運ぶ。

「ときめきトゥナイト展」ポスターなどの修正。

夏には池野恋先生の原画がたくさん見られるのかと思うととてもうれしい。

SF 愛蔵版1巻ラフ。

3/15

アサヒクロスさんにて打ち合わせ。

その後、神保町にて図書印刷さん打ち合わせ。

少し早く着いたので、引っ越したミロンガへ行ってみようと向かったら、おやすみだった。

ヒグチユウコさん『ちいさな画集』本文入稿。

ちいさくても 192p あるので、実は作業量は大きい画集と変わらず、ちいさくないのだった。

(パソコンの中では見た目の大きさ同じだし)

表紙の製本テストがあがったのがかわいく、ユウコさんに写真を送る。

夕方小学館へ。

佐々木暁さんの担当されている通常版のラフの進行もみせていただく。とてもすてき。

3/16

歯医者さんへ。

歯医者さんへ行くのは、かなりかなりの久しぶり。

今の家の近所で見つけたところへ、はじめまして。

知らない間にだいぶハイテクになっていて、少し取った歯石を電子顕微鏡へ持っていき、そのリアルタイム映像(!)を見せてくれた。

手にはいつのまにか「悪い菌のキャラクター表」みたいなものを持たされ、この細長い菌はあれ、丸いのはあれ、とモニターを指して教えてくれる。

なんと白血球が目の前で戦っており、白熱。

少し血がでていたのか、流れていくぐったりした赤血球も確認。

虫歯もなく、「強い歯ですねえ」と言われて終了。

「この映像のデータがほしい」と言い出せないまま無念の帰宅。

歯の強さは穂村弘さんに新聞エッセイに書かれたことがある。

わたしはクルミを歯で割れるのです…。

ヒグチさんのMOEの連載「いじわるねこ」の色校戻し。