コアラ日記

もくじ
この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第51回

3月の日記(前半)

2025年6月15日掲載

3/1

やっと、やっと、PLAY! MUSEUMの堀内誠一展へ。

数々の仕事を拝見し、すみずみまで堪能。

終わり間際の年表をみて驚愕。

活動期間に対して仕事しすぎ! これは無理! と思う。

帰りに吉祥寺によって、またコピスした。

浅田弘幸さんの絵本の別冊作業。

3/2

六角精児さんのちくま文庫の絵を考える。

3/3

平凡社・林さんと『その本はまだルリユールされていない』(坂本葵著)の色校確認。

3/4

津田淳子さん、西塚涼子さん親子、ヒグチユウコさんで大阪へ。

大倉トーイへ行こうの会。大倉トーイはすばらしい夢の店でした。

みんなで今度ビーズやろう、と盛り上がる。

その後、ヒグチさんとわたしは太陽の塔へ。

はじめて見る太陽の塔。おおきい。うつくしい。やさしい。

ぎりぎり中も入館できて、感動。

見られて本当によかった。

すばらしいものをありがとう。岡本太郎さん。

帰りの新幹線で二人とも爆睡。

3/5

朝日新聞・竹さんとレオ・レオーニグッズの打ち合わせ……のはずが。

いつものカフェに行くと、なぜかヒグチユウコ(さん)がおり、

三人でしゃべった。ジェラルディンを描いてくれた。

3/6

『ことばのずかん』(植垣歩子著)表1ラフ。

夜、NHKエデュケーショナル倉森さんと1500にてご飯。

花ズッキーニが食べられてうれしい。

3/7

くどうれいんさんの『スノードームの捨て方』の装画を描いていただく田渕さんと、講談社さんと渋谷で打ち合わせ。

参考にスノードームを買いましょうということになり、ありそうな東急ハンズへ行くも、見当たらず、なんでも知ってそうな店員さんに聞くと「今の時期ありませんね」とのこと。

すごすごとLOFTへ。何年ぶりに入ったのだろう。

観光客向けのコーナーがあり、雷門やら東京タワーやらの詰め合わせになったものや、草間彌生さんのものがあったけれど、なにか違いますねということになり、通販で、ということになって散会。

千種創一さん『あやとり』に使いたい紙が、製本所から使えないと言われ、竹尾さんを巻き込んでやりとり。

夕方から美容院へ。

3/8

たくさんのふしぎ『パイナップルに見た夢』修正など。

集英社・武田和子さんの葬儀へ。

長嶋有さんからの、あまりに、あまりに急の知らせで、受け止めきれていなかったけれど、花に囲まれた彼女を見て、ほんとうだった、と思う。

パーティなどで顔を見かける度に「今度飲みましょうねッ」とお互い言ってたのに。

今度を待っていたらだめなんだ、会いたい人に会っていかないとだめだ。

武田さんと、近所だったせいか、たまに遊んでいた時期があって、彼女が主催した隅田川の花火を見る会に参加したり、いしいしんじさん夫妻と、栗田有起さんと、池田進吾さんも交えて、なぜか長野のいしいさんご贔屓の温泉に泊まりに行ったこともあった。

誰かが、大貧民はトランプが2組あると面白いんだよ、と言って、旅館から借りてきて、飲み続けながら夜通し大貧民をした。面白すぎた。

これも飲み会の話のノリみたいなものででてきた「温泉に行きたいね」だったけど、実行力の塊の武田さんのおかげで、迅速に遂行されたのだった。

いろんなことを思い出しながら、会場のひとびとの顔に、どんなに彼女が愛されていたか感じて、しんみりしていたのだけれど、何年ぶりかの黒いパンプスを履いていることに限界がやってきて、帰りは車まで、生まれたての子鹿のような感じでたどり着いた。

3/9

与謝蕪村の文庫に使いたい絵を送っていたのだが、違う絵のデータが届く。

「涼しさに」という同じタイトルの絵が複数枚あることが判明。

蕪村くんちゃんとタイトル変えてよ!

3/10

高瀬隼子さん『おいしいごはんが食べられますように』文庫ラフ。

単行本と同じデザインでうれしい。

永井玲衣さんの新刊の絵をどなたにするか候補出し。

集英社にてまだ言えない打ち合わせ。

夕方、佐内正史さんの個展へ。

佐内さんの写真はほんとに佐内さんだなあ…。

原宿のVACANTでよくお会いしていたスタッフさんもこちらにきてて、久しぶりにお会いできた。

3/11

ジムへ行き、夕方素敵なレディとお茶をした。

3/12

川内有緒さん『エレベーターのボタンを全部押さないでください』の本文作業。

斉藤倫さん『探検家学園6』本文作業。

午後、コスモテックさんへ車で向かう途中、なんか変なアラートが。

そっと小道に入り、車を止めて説明書を読むと「オーバーヒート」のようだ。

少し待っても温度が下がらないので、しばし考え、近くのENEOSヘ。

店長さんが見てくれるという言葉に甘えて、車を置いてタクシーでコスモテックへ。

千種創一さん『あやとり』の箔確認をしてすぐENEOSに戻ると「こりゃーレッカーだね。もう動かせないよ」とのこと。

冷却ホースが割れているらしい。

人生初のレッカーとなった。

3/13

台湾へ。「デザインのひきだし」の取材で、はじめてみるブリキのステンシル職人さんのところへ。

約束の時間に行っても「歯医者いくから」と消える職人さん…。

自由を感じた。青木由香さんに連絡したら、職人さんともお知り合いとのことで、会いにきてくれた。

青木由香さんのお店でばったり、倉森さんからよく聞いていた「おくずさん」に会えた。

おくずさんは先日放映された小池一子さんの番組のディレクターさん兼漫画家さん。

謎のTシャツを着た日本人がいるな…と思っていたら声をかけられたのだった。

同行していたカメラマンのゆかい・池田さんが今度小池さんの会で写真を撮るそうで、不思議な縁がぐるっと繋がった。

夜は津田さんの好きなクレープ巻き巻きの店(種福園)へ。

3/14

朝は大好き素食包子へ。

今日は何度もお伺いしたことのある日星鋳字行さんへ取材。

活字の母型が作れる、今や貴重な場所。

お客さんがたくさんいて、すごい光景。

夜ご飯は人和園。人数が多いと食べられるものが多くてうれしい。

3/15

お茶を買ったり(林茂森茶行)パイナップルケーキ(佳徳)を買ったり

好きなところでお昼ご飯(雙月食品社)を食べて、夜は酸っぱい鍋(圍爐)へ。

最近の名久井さん

きれいなものをたくさん見て幸せになっています。

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著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。