コアラ日記

この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第37回

8月の日記(前半)

2024年11月15日掲載

8/1

Baharという世界の手仕事のお店をやっている、春日一枝さんから久しぶりに連絡。

春日さんとは、若い頃、大阪のチャルカさん主催の東欧の旅になんども行った仲。

「北方民族博物館さんに行きました。

で、そこで、以前、トランシルヴァニアで買ったエプロン、いただいたエプロンも持って行き、引き取って(寄贈)いただくことに。

事後報告なのだけど、よいかしら?」

もちろんいい。当時の旅行で、現地の服やレースもいろいろ買ったのだったが、わたしには持て余すもので、彼女に渡していたものだったので、むしろずっと保存してもらえるなんて光栄だ。

そして犬を飼い始めて痩せたという話も。近況がうれしい。

本当に仕事がやばくてつらくて、ちょっとでも逃避したくなり、夕方打ち合わせのついでに、坂口恭平さんの展示をやっている表参道のeatripに行ったら、ばったり三宅瑠人夫妻に出会う。

うれしい。最近ではイーユン・リー『ガチョウの本』でお世話になったばかりです。

三宅さんに会うとうれしくてなんかうまく話せない。すみません、三宅さん。

ヒグチユウコさん2025年の手帳の本文入稿。

ヒグチさんの手帳は、2/3ほどメモページなのですが、画集のように、すべての見開きの絵が違うのです。

今年の手帳にヒグチさんが実際に描いている絵も入っていたりすることも。

『フォース・ウイング 第四騎竜団の戦姫』色校を見て、Salyuさんアルバムの色校を見た。

8/2

かこさとしさんのかがく絵本ラフ。

コンドウアキさん、巡回展のチラシラフ。

荒井良二さんのアトリエにて絵本の打ち合わせ。

荒井さんの絵本の原画を初めて見るときのよろこび…。

夕方TOPPANクロレ・Kさんと打ち合わせ。

8/3

チュンコ先生宅でKさんとこんにゃく作り。

昨日、先生は誕生日だったので、お花を買ってゆく。

Kさんがケーキを買ってきたのでローソクにフーもできた。

チュンコ先生の誕生日だが…美味しいお料理をたくさんふるまっていただく。

できたてのこんにゃくとアサリのハーモニーったら!

こんにゃくがアサリのおいしさを吸い取ってもはやアサリだ。

(アサリはアサリで吸い取られてもまだちゃんとおいしいので、アサリは偉大だ)

8/4

ずっと家。とにかく働いている。

8/5

来年行われるとある展示の図録本文ラフ。

MOEの付録のムーミン手帳本文ラフ。

夜、チュンコ先生と水鈴社・篠原さんとquintoでご飯。

こんにゃくを(図々しくも)持参した。

シェフが手を加えたこんにゃくは、なんかもう別人の顔をしていた。

8/6

ヒグチユウコさんのMOE連載「日々の綿」ラフ。

福音館書店・北森さんと打ち合わせ。

イルフ童画館館長・山岸さんと目黒区立美術館にて打ち合わせ。

こんど武井武雄シンポジウムで山岸館長とお話させていただくので、上京に合わせてお会いしたのだが、まあ大丈夫でしょう、という感じで、開催中の「武井武雄展 幻想の世界へようこそ」も堪能。

8/7

NHKさんとzoom打ち合わせ。

河出書房新社にて、前に担当したバカボンの本の新装版打ち合わせ。

引っ越して初めての河出さん。まだなんだか、本の匂いが少ない感じ。

夜、B&Bにて鈴木成一さんの「超実戦装丁の学校」最終講評を聞きに行く。

あまりの密度にくらくら。一冊ずつ自分ならどうするだろう、と考えていたらへとへとに疲れてしまった。

アルビレオさんや、水戸部功さんなど、デザイナーの顔もちらほら。

何かすごいものを見てしまった感じ。大学の頃に通いたかった…!

8/8

「デザインのひきだし」の連載取材。埼玉のコンゴーさんへ。

くわしくは誌面を見てほしいので書かないけれど、抜き型の会社。

トムソン型はもう何度も見ているのに、トムソン刃を曲げさせてもらったのは初めて!

社内では技能認定テストがあり、その超初級に挑戦させていただいた。

手で簡単にキュッと曲げられるイメージだったけれど、工具のようなもので、コツコツと作業する。

筋がいい、明日8時からおいで、とおだてられ、どんどん集中して曲げてしまった。

チュンコ先生とご飯を食べて帰る。

8/9

斉藤倫さん作、牡丹靖佳さん絵『しじんのゆうびんやさん』ラフ。

とても相性のよい二人の作家だなあと思う。

午後、立川のPLAY! MUSEUMさんにて打ち合わせ。

「おばけ展」開催中なので、併設カフェで、バーバパパのいる飲み物を頼んだ人がいたが、バーバパパの色合いのせいで魚肉ソーセージ味にしか見えなかった(が、かわいい)。

8/10

ずっと家。

近藤聡乃さん『一年前の猫』見本をじんわり味わった。

8/11

麻布台ヒルズへ。カルダー展にやっと行けた。

展示方法がとても美しく、広さ以上に楽しめた。

いつかカルダーのモビールがほしいと思い続けていたけれど、格好いい空間がなくては意味がないんだな…とあきらめがついた。

初めて行った麻布台ヒルズ、近年のビルにしては別格の丁寧な作りで、建物のいろんな部分を味わった。

大垣書店さんのセレクトもよくて、思わず散財。

パリ五輪のせいか、東京タワーがパリの国旗色になっていて、HERMESの建物と並んで光って見えて、似合っていた。

8/12

ヒグチユウコさんの新刊絵本『ギュスターヴくんとまぼろしのどうぶつ』ラフ作業。

福音館書店から刊行されている拙著(井上佐由紀さん写真)『ない!』の中国繁体字版が届いた。とてもうれしい。

8/13

仕事がやばすぎて、でも眠くて仮眠をとったら、

夢の中でも仕事をしていて、しかも知らない仕事だ。

え、と(たぶん現実の方の)わたしが困惑していると、ちいさいねずみが現れて「夢だから仕事も架空なんですよ」と説明され、イラッとして起きられた。

ねずみ、ありがとう。

文月悠光さん詩集打ち合わせ、草思社・渡邉さんと打ち合わせ。

MさんKさんと中野のマツキにてご飯。

バルセロナで買った歯磨き粉を開けた。

どうみてもアクアフレッシュ的な3色のものがニュッとでているパッケージなのだが、出してみると真っ白で、「うそつき!」と思った。

(言語が読めていたらわかったことなのだろう)

海外で歯磨き粉を買うのがいつの頃からか習慣になっていて、それがなくなる頃、またどこかへ行きたくなってしまう。

8/14

左右社にて水野しずさん、筒井さんと歌集『抜け出しても抜け出しても変なパーティ』打ち合わせ。

8/15

東直子さん『フランネルの紐』ラフ。

松浦弥太郎さんの本の資材決め締め切り。

コンドウアキさん『ゆめぎんこう もぐもぐのおるすばん』色校を見に白泉社へ。

そのあとひとつ打ち合わせがあり、さらにそのあと小学館ドラルームへ。

「ざしきボーイ」のフィギュアのテストができていてとてもかわいい!

伊勢丹に寄って充電して帰宅。

最近の名久井さん

とうとう半袖だけで出かけるのをやめました。

著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。