コアラ日記

この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第11回

7月の日記(前半)

2023年10月15日掲載

7/1

朝からSPBSの短歌教室の先生をするため、豊洲へ。

SPBSとはSHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERSが本名。

本店は奥渋にある本屋さん。

引き受けたときは渋谷かな?と思っていたけれど、豊洲の方だった。

ナナロク社・村井さんに「渋谷だと思ってるでしょう⁉︎ 違うんですよ!」と事前に教えてもらっていて助かった。

枡野浩一さん、左右社・筒井さんと話すので、わたしはとても気が楽。

タイタンのお笑いの学校に生徒として通っているという枡野さん。

終わったらすぐ授業へ行かなければ!という枡野さんをなんとか送り出す。

市谷の杜 本と活字館で14時から開催のチュンコ先生と越前のお館さま(杉原吉直さん)のトークに、やや遅刻ですべりこみ。

DNPの佐々木愛さん(あいたん)とトークのおふたりと、水鈴社・篠原さんと、篠原さんセレクトのお店でごはん。

秋に越前ツアーをしようと盛り上がる。

7/2

夕方から、池尻にて、穂村弘さん、伊藤紺さん、坂巻弓華さん、脇田あすかさんの展覧会「ことば と え の4人」オープニング。

言葉にまつわる展示はむずかしいと思うのだけれど、とてもうまくいっていて、楽しかった。

おしゃれな方達がいっぱいいて、見ているだけでそちらも楽しく。

ドラルーム・今本さんと、石関さんとuguisuでご飯。

おいしい週末だった…。

7/3

『マルナータ 不幸を呼ぶ子』(ベアトリーチェ・サルヴィオーニ著)『ヒロインはいつも泣いている』(関亜弓著)ラフ。

友人に送っていた宅急便の感想が写真で届いて面白かった。

松岡茉優さん主演の「愛にイナズマ」試写会へ。

最初の方があまりに重く、どうしよう、つらいかも、と思ったけれど、そのパートが抜けたら、もう本当にすばらしかった。

兄妹たちが特にいいのだけれど、次男さん、どこかで見たすてきな俳優さん…と思ってあとで検索したら「おちょやん」にも出ていた若葉さんだった!

心が動かされたせいか、ぐったりしてしまって、早寝をする。

普段心を動かしていないので、ちょっとしたことで筋肉痛。

7/4

KADOKAWA・佐々木さんと打ち合わせ。

US生活と旅行さんという変わった名前の方の本。

YouTubeはほとんど見る習慣がないのだけれど、おもしろい番組?がたくさんあるのだなあ!と思う。

US生活と旅行さんの番組を拝見したら、とても丁寧なお話ぶりに、やすらかな気持ちに。

7/5

税理士さんと打ち合わせ。

わたしの会社は5月決算なので、いろいろやらねばならぬことが多くてつらい。

帰りに法務局などに寄って帰る。

ボリス雑貨店へ寄り、明日からのタダジュンさんとの展示を見せていただいて、オリーブをまた切らせてもらった。

前のは失敗したようなので…。

7/6

10時から浦和の埼玉会館にて、マームとジプシー・藤田くんと打ち合わせ。

遠い…ので朝がはやい。

早起きしてまずオリーブを植えた。

停めていた車がものすごく熱くなっている。

熱くなった車に乗るのがとても好きで、ジュッとなる感じを味わう。

午後、点滅社・屋良さんと打ち合わせ。

とある方の第一歌集。

税理士さんに言われているあれこれを片付けつつ仕事。

7/7

ジムにゆく。停めた車に戻るととても熱く、今日もジュッと座る。

マガジンハウス・瀬谷さん、大島さんと、テレビ朝日さんと打ち合わせ。

夕方、台湾でお世話になった青木さんが東京に来ているというので、モギさんセッティングのご飯。

はじめましての方々もいたのに、なんておだやかな時間。

青木さんの移動の都合で、2時間ほどの邂逅だったけれど、充実。

自転車で戻って、仕事をがんばる。

7/8

早朝から羽田に行き、チュンコ先生とTKと福岡へ。

レンタカーで運ばれ、日田焼きそばを食べた。

この焼きそばは、初めての感じだなあと思う。

また運ばれ、小石原焼のお店やら、工房やらをめぐる。

お休みのところもあって残念。

小石原焼は、東京のお店で見て知っていたけれど、だいぶ、フィルターにかかったものが来ていたのだなと思う。

思っていたよりとても多彩。

翁明窯元さんがとてもすてきで、ちょうど開催中だった作家さんの展示もすばらしく、器を購入。チュンコ先生は壺を購入。

「最近、壺のよさがわかってきたのよ…年かしらね!」とのこと。

それは、とてもわかる…。壺とてもいい…。

今日はとても大雨で、あるところでは道路が10センチくらい水だった。

そんな中、チュンコ先生は車からめざとく「チロルチョコアウトレット」を見つけ、たぷたぷの道を戻って寄る。

初老の我々には処理しきれない大袋が、とてもお値打ちで販売されていました…。

夜は目的であったお寿司屋さんへ。

ふたりが気に入っている店だけあってとても美味しく。

7/9

朝から資さんうどん。

一番人気という「肉ごぼ天うどん」を注文。

プラスして、とても名物だという「ぼたもち」も注文。

大変おいしかったが、自分の非力を感じた。

うどんにあふれる肉、そしてごぼう、がしかも天。

そのうえおはぎを食べようとなんで思ったのだ20分前のわたしよ。

連れられるままに、日本一人気だという道の駅へ。

開店1時間前に行ったというのに、行列の1番前ではないという驚き。

1時間待つ間に順調に列はのび、開店とともにお店へなだれこむ。

店内にはロッキーのテーマが流れていた…。

その後も連れられるままは続き、たくさんの道の駅などを堪能して、空港へ。

午後早いうちに羽田につき、宿題に突入。

朝日新聞から頼まれていた書評を書かねばならず、作品を読んで着手。文章を書く仕事はむずかしい。

この日記もむずかしい。

7/10

『宇野亜喜良 ポストカードブック新装版』の本文ラフ。

午前中、浅草のKISSA BOOKSさんにて、はしもとみおさん、KISSA BOOKS・瀧本さん、編集さん、藤原印刷さん、KISSAさんの黒猫さんと打ち合わせ。

暑い。とても暑い。

道ゆく自転車の人の口の形が「あ・つ・い」と動いていた。

そのあと小学館へ寄り、SF短編の4巻ケースのチェック。

カーナビが、もうない信号の名前を言うとき、信じる心みたいなものを思う。

夕方、コンタクトレンズの処方箋をもらいに3年ぶりに行きつけの眼科へ。

使い捨てのコンタクトレンズの処方箋が3年で切れるので、更新がてら、視力も再検査。

すこし近眼が進んでいたので度数をアップ。老眼はまだ大丈夫とのこと。ほっ。

その眼科は視力をはかってくれる紳士がとてもエレガントで、「あなたに会うためにずっとこの眼科なんですよ」と言いたくなったが、こわいな、と思って踏みとどまった。

眼科は、昔住んでいた目黒のアトレの中にあり、大改装!の後ということで、期待をもって店内を回ったけれど、馴染みの店感はたっぷりと残っていた中、カルディが入っていたことに一番驚いた。

なんとなく買った「Uncle Saba’s Poppadoms」というレンズ豆のチップが異様に美味しく、なんで10個買わなかったんだ!と後悔。次にカルディに会えたらかならず買う。

7/11

ながしまひろみさんと、アリス館・山口さんと打ち合わせ。

ながしまさんと久しぶりにお会いできてうれしい。

絵本の仕上がりがとてもたのしみ。

いつもの歯医者へゆき、今日も掃除。

だんだん掃除するところすらなくなってくる。

昼間、うちのグラキリスの様子をメダカの先生(水鈴社・篠原さん)に伝えたら、入院が必要かもしれないということになり、夜中、篠原さんちに連れて行く。

オペが行われ、ICUに入ったようで、あとは祈るばかり。

7/12

午前中、早川書房・窪木さんがピーターラビットの色校を持ってきてくれる。

午後は予約していた東京都美術館のマティス展へ。

友人の及川賢治さんより、Tシャツのおつかい(あまりに気に入ったので洗い替え用)を頼まれているので、在庫があるかと気になりつつ到着。

車で行き、上野公園の中を450m(GoogleMap調べ)しか歩いてないのに暑すぎて、一歩毎にザッザッとドラクエの毒沼を歩いているような感じ。

マティス展は、ものすごく自分でも何かを作りたくなるような気持ちになった。

以前こんな気持ちになったのは、15年くらい前で、金原ひとみさんの小説を雑誌で読んだ時。

すぐさま自分も小説が書きたくなって書いてみたが、10行たらずで終わってしまった。

なので今回もマティス効果にあまり期待はしていない。

外出ついでに、恵比寿のLibrarie6で開催中のヤン・シュバンクマイエル展へ。

こんなに、見せてもらっていいんですか、というような展示。

日本ではまだここでしか観られないという長編映像もすばらしかったが、オーナーの佐々木さんが撮ってきた映像もとてもよかった。

河出書房新社・竹下さんのところへ、『マルナータ 不幸を呼ぶ子』の色校。

小林エリカさんの絵がぴったりでうれしい。

明日は早朝から取材で外出というのに仕事がなかなか終わらず、朝を迎える。

7/13

30分しか眠れないまま、「デザインのひきだし」の取材で埼玉(ほとんど群馬)にあるダイニックさんの工場へ。

カメラマンの井上佐由紀さんが素敵な新車でお迎えにきてくれたので横で揺られるがまま2時間。

お約束のように毎回「最近素敵な人撮った?」と聞いているのだが毎回かえってくる人名に、

「そりゃーかっこいいはずだー」「いいひとなのかー」と、とても楽しい。

取材を無事終え、「含浸やっぱいい!」とかチュンコ先生以外に誰にも伝わらなそうなことを思いつつ、また佐由紀カーにて戻る。

帰ってからまた必死に働く…。

『荻窪メリーゴーランド』(木下龍也・鈴木晴香著)などいろいろ入稿。

7/14

場合じゃないのに、我慢しきれず朝一の回で「君たちはどう生きるか」を観る。

どうしてもまっさらな状態で体験したかったのだった。

わたしは六本木のTOHOシネマズで観たのだが、日比谷で観たドラルーム・今本さんとやりとりするとだいぶ雰囲気が違ったみたいで、観る映画館も大事だなと思う。

六本木ではチケットを見せるところで、引き換えにチラシを渡され、そこに「映画を見終わった後…もう一度よく考えてみてください…」みたいな文言とともに、認知症にかかる可能性がわかるテストみたいなものが載っており、え、え、これもしかしてネタバレじゃないの? やめてよーとバイアスをかけられ、最後まで主人公がいつ認知症になるのかと少し疑って観てしまった。チラシは帰りに渡してほしかった…。

午後、『ブリアナ・ギガンテのほんとうにあったかどうかはわからない物語(あなたしだい)』特装版入稿。

左右社さんにて、SPBSの短歌の学校の次回のことを打ち合わせ。

今日は夕方からSF短編の食事会があるので(初めて佐々木暁さんに会えるので)猛烈な勢いで働く、しかしいろいろ間に合わず、当のSF短編の締め切りを延ばしていただいた…。

佐々木さんにお会いできて、心からうれしく、でも言いたいことは言えなかった。

「好きです…!」

浅草でご飯で、帰りに小学館・今本さんが、(数日前にニュースで見たという)「浅草寺の剥がれた天井でも見て帰りましょうよ」というので、見に行ったけれど、もう夜だから扉がしまっていて天井は見えず、では、ひきたいひとだけおみくじをひきましょう、ということになり、財布を見ると、90円しかない。

佐々木さんが10円をくださって、いざ。

「ここは8割が凶らしいですよ」とのことだったが、わたしは吉、佐々木さんは末吉、今本さんは半吉、ドラルームの目黒さんは凶。

佐々木さんは引っ越しが近いそうで、

引っ越しの項目がわたしのだけよかったので、10円分、その結果は佐々木さんのものとしてもらった。

7/15

午前中、マンションの管理人さんと、住民の方と話したら、このマンションの周辺の意外な歴史がわかり、すごく楽しくなる。

(場所がわかってしまうので書きませんが…)

夕方から、タダジュンさんと平松麻さんのトークイベントを聞きに西荻窪の今野書店へ。

タダさんとは何回かお仕事をご一緒しており、最近では『左川ちか全集』。

平松さんとは『食と酒 吉村昭の流儀』(谷口桂子著)でお世話になりました。

なんとなく、吉村昭に平松さんの絵が合うと思ってご依頼をしたら、ものすごくお好きだったらしく、携帯電話の待ち受けもなんと吉村昭でした…!

会場にすべりこんだら、穂村さん夫妻がおり、約束もしていなかったので、やあやあ!となる。

平松洋子さんにも久しぶりにお会いでき、うれしい。

今野書店の花本さんにもお会いできてダブルうれしい。

トークの終盤、その場で壇上の2人が作った版で、世界に一枚だけの合作版画を会場にきている人にプレゼント!ということで大ジャンケン大会になる。

欲望を拳に集めて勝負に勝ち抜きつづけ、最後の3人まで残ったけれど、勝者はなんと穂村弘さん!

ずるい! うらやましい! 

帰りに夫妻とご飯を食べたら、今日は気分がいいから!と穂村さんが奢ってくれました。

(でもいつも奢ってくれます…ありがとう!)