コアラ日記

この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第19回

11月の日記(前半)

2024年2月15日掲載

11/1

今日は友人ふたりの誕生日。

全く違うおふたりだけど、同じ日に思い浮かべて、楽しくなる。

午後、しまおまほさんのご実家にて、ナナロク社・村井さんと打ち合わせ。

初めてのときほど緊張しなかったけれど、ご両親が撮ったお写真をたくさん見せてもらって、やっぱり気持ちがピンとする。

マガジンハウス・関谷さんと『金継ぎおじさん』(堀道広著)資材のやりとり。

金継ぎの本だから、やっぱり金継ぎ(金箔)にしたい。

黒柳徹子さん『続・窓ぎわのトットちゃん』がもう6刷ということで奥付の確認。

11/2

午前は図書印刷さんと打ち合わせ。

フジモトマサルさん『ウール100% 完全版』責了。

宮木あや子さん『令和ブルガリアヨーグルト』も責了。

松岡茉優さん『ほんまつ』も下版したとのことで、ほっとする。

福音館書店へ行き、「こどものとも3月号 はんぶんライオン」(猫野ぺすか著)作品の色校。

早川書房へ寄ってピーターラビット色校。

水鈴社・篠原さんと『互換性の王子』資材のやりとり。

近所で気になっていた味噌ラーメンを初めて食べた。

もう気にならなくなった。

11/3

たまにチュンコ先生と「調査」と称して行ったことのないレストランに行くのだが、ひさしぶりの調査はとてもいい成果だった。

勘だけがたよりの調査なので、いい時(美味しい)も微妙な時もある。

11/4

立川のSUPER PAPER MARKETにて紙くじ。

チュンコ先生、100%ORANGE繭子さん、越前和紙のお館さまと、11時から19時まで立ちっぱなしで接客をし、途中からロボットのようになる。

それでも、目の前で一喜一憂を見られるのはとても楽しい…。

(憂の人は少なかったと信じたい)

同時開催のナナロク社さん展示が目の前で、盛況ぶりをナナロク社・村井さんにたまに実況中継。

だれかが…漂っているなと思ったら、山階基さんだった。

終わってから、みなでそれぞれの定食を食べ、中央線に乗り、ひとりずつ途中の駅で降りて行った。

立川は蚤の市にくるひとや、北欧フェア?や、ひとがわんさか。

繭子さんが紙くじの店員をしながら「ここにくるカップルや家族はみんな笑顔ね…!」と言っていたけど、笑顔になれないような人たちは、休みの日にこんなところにこないのではないか…と思った。

11/5

ヒグチさんと電話でMOEの来年のカレンダーの相談。

11/6

ずっと家。

ベランダで育ちまくったけれどパスタにすらされなかったバジルと、たまに使われてはいたけれど収穫が追いつかなかったシソでペーストを作ってみる。

上出来だけどミキサーを洗うのが面倒。

黒柳徹子さんの『木にとまりたかった木のはなし』修正ラフ。

藤子先生、SF8巻のいろいろ戻し。

カルティエの『マチルド・ローランの調香術』(関口涼子訳)修正ラフ。

青木海青子さん『不完全な司書』仕様を提出。

キム・エラン『唾がたまる』ラフ(催促の電話がきて、蕎麦屋のような返答)。

『野球短歌』(池松舞著)の帯変更。受賞帯はよくやるけれど、阪神が優勝したことでの帯変更というめずらしいもの。

(阪神が勝たないから作られた短歌の歌集なのです)

「ちくま」12月号色校をもどし。ヒグチユウコさん、3年間完走!

わたしは8年目へ…。

11/7

『木にとまりたかった木のはなし』入稿。

ナナロク社・村井さんと打ち合わせ、竹尾にて、水戸部さんと展示の打ち合わせ。

夜バイク便で『夜を着こなせたなら』(山階基著)の見本が届く。

きれいにできて、本当によかった…! ハラハラしてた…!

白泉社50周年のコメントを提出。

雑誌のMOE、小学生の時から読んでいたこと(そのころは版元が違うんだけど…)、和の職人さんを訪ねる連載を春日一枝さんとしていたことなど書く。

11/8

一日遅れでピーターラビットのラフ提出。

マガジンハウス・大島さんと、テレビ朝日関連絵本のやりとり。

(未来からこんにちは。先日『Wピース』というタイトルも発表されました。著者は劇団ひとりさん、中居正広さん、古市憲寿さん)

11/9

今朝もまだ朝顔が咲いていて、なんだか心配になる。11月だよ。

午前中から午後にかけてNHKエデュケーショナルさんと今月撮影する番組の打ち合わせ。

半袖の人がほとんどいなかった…。わたしだけが半袖。

『よっちぼっち』(齋藤陽道著)の見本が届く。

『不完全な司書』ラフ、夜に入稿。

若松英輔さん『ことばのきせき』ラフ。

柴崎友香さん『続きと始まり』カバーの三校がくるけどまだ微妙でとても不安。

色校が本当に一番こころをかき乱す…。

『〈きもち〉がいちばん好きなもの』(ティナ・オジェヴィッツ著・アレクサンドラ・ザヨンツ絵・森絵都訳)のカバーラフ。この絵本はシリーズ2作目。前回は親本を踏襲、今回は大幅にイメージを変えることに。

11/10

チュンコ先生とTKと毎年恒例の釧路へ。

お昼に着いて早々、大好きなラーメン屋さん「まるひら」へ。夜は改装された「炉ばた」へ。

「炉ばた」は数年前に火事になって、味のある店舗が焼けてしまったのだった。

改装されると、なんだかペカペカして落ち着かないことがあるので心配だったけれど、いい改装だった。

今回はTKが風景印を集めているというので、方々の郵便局へ移動する旅。

11/11

朝ごはんにまた「まるひら」。和商市場のいつもの店でいつものもの(ほっけやいくらなど)を買う。

その店で鮭とばを見たことがないが、おすすめを知りたかったので、店主の方に「市場の中で鮭とばのおすすめ店舗は?」と聞いたら、そっと奥から鮭とばがでてきた。

わたしは氷下魚(こまい)が大好きで、乾燥氷下魚を買いたかったけれど今回は良いのがなく見送り。

夜帰宅。

11/12

車のブレーキランプが切れているんじゃない?みたいなアラートがでたのでディーラーへ行き、修理してもらう。

11/13

11/23から21_21DESIGN SIGHTで行われる「もじ イメージ Graphic展」の許可どりをもりもりと。

河出書房新社に行き、色校をゲット。

11/14

「ちくま」の1月号ラフを出し、京都・大原へ「デザインのひきだし 51」の連載の取材。

驚きの技術などをたくさん聞いて、へー、ほー、いいなー、の連続。

くわしくは記事をご覧ください。

大原といえば、しば漬けということで、土井志ば漬本舗さんで定食を食べる。

なんと漬物類がバイキング状態!

帰宅後、柴崎友香さん『続きと始まり』色校。やっと、きれいになって、ほっ。

俵万智さんが、朝日新聞の有料記事をメールでプレゼントとして送ってくださる。

本ができると、著者さんと編集さんとのチームから、デザイナーは離脱してしまうので、本ができあがった後も気にかけてくださって、とても嬉しい気持ちに。

11/15

こやまこいこさんと、KADOKAWA・中村さんとぬいぐるみに関する漫画のzoom打ち合わせ。

(この時はタイトルが決まってなかったのですが『わたしのぬいぐるみさん』というタイトルで刊行されました)

『唾がたまる』色校戻し。

著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。