コアラ日記

この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第12回

7月後半の日記

2023年10月30日掲載

7/16

昼間は仕事をし、夜、チュンコ先生と、大好きな焼き鳥屋さん波多野へ。

グレープフルーツサワーを飲みながら、ぱくぱく食べる。

途中、アーモンドの話になり、子供の頃、グリコのアーモンドチョコレートは「種あり」のチョコレートだと思っていて、なめて出していたことを話す。

その頃、デラウェアは種無し、巨峰は種あり、アーモンドチョコも種あり、という感じでそっちの仲間だった。

7/17

藤田貴大さん演出の「めにみえない みみにしたい」を観に埼玉会館へ。

写真家の井上佐由紀さんと、外山さんが車でピックアップしてくれたので、かわいい佐由紀カーに乗ってゆく。

舞台は子ども向けのもので、初演はもう何年も前。

ものすごくアップデートされていて、わたしは今回の方が好み。

夕方もどって、とにかく仕事。

7/18

めずらしく人と会う予定のない日。

前回帯に推薦文を書かせていただいた『デザインのアトリエ 活版印刷』に続き、『デザインのアトリエ 石版印刷』の推薦文を書き、もう10年以上担当している雑誌MOEのふろくのムーミンダイアリーの表紙作業。

冷蔵庫の製氷器の容器を割ってしまったので、ビックカメラに注文しにゆく。

製氷器の浄水フィルターだけはネットで買えるのだが容器は買えないという煩わしさ。

7/19

ピーターラビットの修正を送り、とあるところで打ち合わせ(まだ書けない)。

パリ帰りの方から、おねがいしていたお買い物にくわえ、お土産にPoilaineのクッキーをいただいてしまった!

なんという! うれしさ!

帰りにグラフィック社へ寄り、『宇野亜喜良ポストカードブック』の色校を見たので、チュンコ先生にもほんのすこしお裾分け。

7/20

藤子・F・不二雄先生のSF短編5巻のいろいろと6巻のプレートのラフ。

思いつきで、ヨドバ氏づくしの案もだしてみる。

(ヨドバ氏はいろんなカメラを売りつけてくる人なのです)

左右社にてSPBSの短歌講座のうちあわせ。

河出書房新社へそのままゆき、『マルナータ 不幸を呼ぶ子』(ベアトリーチェ・サルヴィオーニ著)再校。

編集の竹下さんがインドに行っているので、高野さんがかわりに対応してくれる。

『ザ・ブラック・キッズ』(クリスティーナ・ハモンズ・リード著)帯など作業。

7/21

ジムへゆき、ぬいぐるみ本(と呼んでいるがまだタイトル未定)のzoom打ち合わせ。

はじめまして、と顔をあわせるだけのようなzoom。

オンラインでずっと話すのが苦手なので、このくらいあっさりしているのはいいな、と思う。

夕方、図書印刷・北川さんと打ち合わせ。秋に出る絵本について。

青山ブックセンターの夏の選書の原稿を一日遅れで提出。

お待たせしているものがいくつかあって、心苦しい金曜。

7/22

朝9時から、水鈴社・篠原さんと植物のイベントへ。

家から自転車圏内だったので、自転車で行ったのだが、近くに停めにくく、ちょっと離れたところに停めたら、迷ってしまった。

時間通りに着いたというのに、もう150人が待っており、近くのカフェで時間をつぶす。

会場で出会ったある植物に心をうばわれるも、払える金額ではなく、ずっとじっとそればかり見つめる。

この鉢でこの値段なんて安いですよ!と知らない方々まで説明してくださる。

知らない人と、うっとりと植物を見て、かわいさについて話し、写真を撮る。

会場のみなさんがとても楽しそうで、それを見ているだけでも、なんだかよいイベントだった。

穂村弘さんちに子猫がきたので、写真がいっぱい届く。

7/23

午後はパレットクラブで先生の日。

パレットクラブは、原田治さんが作ったイラストレーターのための学校。

ここから冬まで、一緒に過ごす生徒のみなさん、どうぞよろしくおねがいします。

帰りに、わたしの中では恒例の、いわて銀河プラザに立ち寄り、

初めて見るラフランス100%のジュースやら、贔屓の巖手屋の南部せんべいやら、お気に入りの冷凍ほや(×3)を買って帰る。

夕方、穂村さんちへ子猫に会いに行く。

ちやほや、という音が聞こえてきそうだった。

7/24

先週の遅れを取り戻すかのように、朝たくさんのデータを送る。

『おやすみ短歌』(枡野浩一・pha・佐藤文香著)のフォーマット、『ザ・ブラック・キッズ』入稿、

『悩んでもがいて、作家になった彼女たち』(イザベラ・ディオニシオ著)ラフ、小玉ユキさん『狼の娘』2巻ラフ、SF短編5巻の修正など。

午後、岡野大嗣さんと、太田出版・藤澤さんとzoom打ち合わせ。

岡野さんとは近いところに漂っていたのだが、はじめましてだった。

昔、デザインと編集委員を担当した『えーえんとくちから』(笹井宏之著)を本屋でジャケ買いして、今に至ると聞いたので、なんていうか…うれしい気持ちと、年月よ!という気持ちで胸がいっぱいに。

夕方、毎月恒例美容院。

穂村さんと2人で並んで切ってもらう。

帰りに回るお寿司(でも実際は回らない)に寄って帰る。

7/25

朝まで仕事をしていたら、小腹がすいた気がして、スイカを食べる。

早朝にスイカを食べるのははじめてだなあと思いながら種をよける。

いつもよりお盆進行で早い、PR誌「ちくま」の入稿。

夕方から扶桑社へ行き、まだ言えない本の打ち合わせ。

外の駐車場に停めていた車に戻ると、触れないほどのハンドル、全身を温浴効果であたためる座席…

気持ちは沖縄になり、幸せ…。

夏は何度でもこれが味わえるのでうれしい。

7/26

朝起きて小腹が空いているなあとまた思い、解凍していた冷凍ほやをベランダで食べる。

好きなものを朝っぱらから食べる幸せ!

ミュージカルのようにベランダから歌いたい気持ちになった。

台湾の食事の席でモギさんが、好きなもの3つと聞かれたら

桃、加工肉、もんじゃ、と言う! とすばらしい3つを答えていたけれど、わたしは確実にほやが入る。あと稚鮎。みっつめはいつも考え中。

午後、竹尾さんにて水戸部功さんと定例会議。

水戸部さんに「だらだらすることある?」と聞いたら、いい答えが返ってきて、友だちになれるな、と思った。

帰りにビックカメラに寄り、冷蔵庫の製氷容器を手に入れたので、そうめんがまたできる。

7/27

絵本『きみと風』(夏生さえり作・木下龍也短歌・くまおり純絵)入稿。

朝から歯医者さん。今日は右上をきれいにしてくれている。

午後、『ザ・ブラック・キッズ』の色校を晶文社・葛生さんが持ってきてくれる。

きれいにでていて超うれしい!

きれいな初校がわたしの気分を一番あげてくれる。

翻訳ものだけれど、本国の単行本の絵がとてもすてきで、そのまま使わせていただいた。

なので、わたしはそれほど仕事をしていないのだが、葛生さんは折にふれほめてくださるので、心の角がまるくなるようなうれしさ。

帰宅したら、ひどい色校が届いていて、一気に陰鬱に。

7/28

『古本食堂』(原田ひ香著)の文庫ラフと入稿いっぺんに。

絵は西村ツチカさんに素敵に描いていただいた。

小玉ユキさんの『狼の娘』コミックスと「Flowers」の連載扉入稿。

『荻窪メリーゴーランド』(木下龍也・鈴木晴香著)の色校をもどし、POP作成。

午後、おかざき真里さん、河出書房新社・谷口さんらとzoom打ち合わせ。

おかざき先生とは久しぶりにご一緒できてうれしい。

平安モノの作品で、もう断然、衣装なども先生がくわしいので、ただただ、おまかせしたい気持ちで甘える。

おかざき先生のご実家は長野の上田で岡崎酒造さんというのだが前に伺って買ったらとても美味しく、

上田に行かれたらみなさんぜひ。

(日記なのに呼びかけるのは変ですが)

夕方、MdNの方々とうちあわせ。

7/29

早起きをして一人京都へ。

京都のZENBI 鍵善良房 KAGIZEN ART MUSEUMで開催中の「宮永愛子 海をよむ」と、カーリン・コースター・ケリの指輪の展示を、どうしても見たかったのだった。

はじめていくギャラリーは美しく、とても静謐。

鍵善で宮永さんの作品をモチーフにした生菓子とお薄をいただき、暑い川沿いを少し堪能して早々に帰宅。

7/30

つま先の開いたサンダルを履こうと思い、何年ぶりかにネイルサロンへ。

近所だということだけで選んだ店は悪くなかった。

担当してくれた若い方にこのあたりのランチ事情など聞いてみるが、「セブンなくなってつらい」に尽きるのだった。

(わたしもつらい)

7/31

佐野洋子さん『わたし クリスマスツリー』ラフなど提出。

もみの木が、走る! すごく愉快な絵本。

著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。