コアラ日記

この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第15回

9月の日記(前半)

2023年12月15日掲載

9/1

半年くらい前の自分がGoogleカレンダーに入れていた指示にしたがい、ベランダのレモンの木に肥料をやる。

佐野洋子さんの『わたし クリスマスツリー』色校のためジロチョーさんへ。

この絵本は、もみの木が走る痛快な絵本。原画はとてもとても色が綺麗。

夕方から銀座にある教文館ナルニア国さんで、出久根育さんと『ぼくのサビンカ』発売記念オンライントーク。

出久根さんはチェコにお住まいなので、オンラインがぴったり。

画面越しに初めて見えるアトリエ。お庭の木。

木は絵本にでてくるそのままで、知っている人に会えたような気持ち。

9/2

自転車であちこち。

マルタンマルジェラへ行こう、と急に思い、大学生の頃から存在は知っていた「足袋ブーツ」をとうとう購入。

試しに履かせてもらうと、なんという楽ちんさ!

ヒールがけっこうあるのに、安定感もすごい。

みんな楽だから履いてたんだ!と思う(きっと違う)。

初めてのマルジェラとなった。

9/3

ずっと家。

岡野大嗣さんがApple Musicのプレイリストを送ってくれる。

My favorite的なカセットテープを昔もらったり作ったりしたことがあるけれど、それ以来! ものすごくうれしい。

そして岡野さんの音楽の趣味は幅広く、あれが好きこれが好きとやりとりをしていくうちに、どんどん「掴まれてる」感じがすごい。

9/4

矢部太郎さん『楽屋のトナくん』打ち合わせで講談社へ。

矢部さんはいつも丁寧で、打ち合わせもとても楽しい。

もう3巻だけれど、人物紹介のところとか、合間に入る絵とか、毎巻微妙に変えているので見比べてみてください。

矢部さんは今大河ドラマの撮影をされていて、側近のひとりとのこと。

来年見る楽しみができた。紫式部だそうだし、越前もでてくるかもしれないな…。

ながしまひろみさん『ぞうくんはいちねんせい』ラフ。

齋藤陽道さん『よっちぼっち』のラフも出さなくてはならないのだが、まだもやっとしていてピンとこず、待ってもらうことに。

9/5

角川書店にて、ダヴィンチ編集長・川戸さんと絵本の打ち合わせ。

川戸さんは、高校の後輩で、なんとなく盛岡の話もしたり。

夜にまた岡野大嗣さんと音楽のやりとりをし、わたしの趣味を掴みきった岡野さんは、好きなものばかり出してくる店みたいになっている。

9/6

舞台「橋からの眺め」(アーサー・ミラー作)を観に東京芸術劇場へ。

チラシがとてもよかったのと、福地桃子さんが観たくてふらっと行く。

舞台のジャケ観?は初めてかもしれない。

装置がとても美しかった。

パンフレットが買いたかったのに現金のみとのことで、買えず。

お札が一枚もなかったのだった。

早川書房でピーターの色校を見て、小学館でSF短編の色校を見て、帰宅。

9/7

恒例美容院の日。

穂村さんと回らないけど回転寿司を食べて帰る。

9/8

朝起きると、ベランダフェスティバルが行われていて、朝顔が18個も咲き、睡蓮は1個、ハイビスカスは3個も開花。華やかだった。

北鎌倉で五十嵐大介さん、水鈴社・篠原さんとランチ打ち合わせ。

おいしいものをいただきつつ、夏川草介さん『スピノザの診察室』の絵の依頼。

鎌倉を何も味わうことなく電車にのり、左右社にて筒井さんと色校を見る。

『まだ温かい鍋を抱いておやすみ』文庫(彩瀬まる著)入稿。

『さんかく』文庫(千早茜著)入稿。

『トゲトゲ』(はしもとみお著)ラフ。

9/9

神奈川立近代文学館の企画展〈「おまけ」と「ふろく」展〉のイベントへ。

野上暁さんと小学館・徳山さんの対談「学年誌の付録にみる子ども文化史」拝聴。

終わるや否や駅までいそぎ、銀座のパレットクラブの先生へ。ぎりぎり到着。

9/10

チュンコ先生の家にて、かつおの会。 

TKが高知からかつおを運んでくるというので開かれた会。

100%ORANGE・まゆこさんも来ていて、ビーズ手芸をふたたび。

9/11

平凡社・林さんとフジモトマサルさん『ウール100% 完全版』打ち合わせ。

今年もお誕生日に発刊の予定。「ウール」はずっと絶版だったので、復刊がとてもうれしい。

マルタンマルジェラへ底貼りを頼んでいたブーツを取りに行く。

夜、水鈴社・篠原さんから寿司の写真が次々に届く。

9/12

集英社・古川さんと柴崎友香さん『続きと始まり』打ち合わせ。

柴崎さんの小説は、年々攻めている気がする。

そんなに動いてないように見えるけれど、高速で回転しているみたいなイメージ。

友人から寿司の写真が次々と届く。

連日寿司を送られるわたし。うれしいけど。

今井昌代さんと久しぶりにご飯。

彼女がジョギング中に拾ったコアラのゴム人形をもらう。

「コアラいたよ」と写真を送ってきてくれて、それがとても年季が入って可愛かったので、次の日になってもそのままだったら、捕獲してきて、と頼んでいたのだった。

楽しい夜だった。

9/13

赤々舎さんと打ち合わせ。

ナナロク社・村井さんと打ち合わせ。

US生活&旅行さん『ギリギリ消耗しない生き方』の本文フォーマットを作り、『トゲトゲ』入稿。

松岡茉優さんの本の表紙ラフ。本文もぐいぐいと進行中。

9/14

朝日小学生新聞&中高生新聞さんの取材を受ける。

ブックデザイナーという職業紹介のようなコーナー。

小学館で色校を見ているところと、ブックハウス神保町さんで撮影していただく。

図書印刷さんと打ち合わせ。

ヨシタケシンスケさん『かみはこんなにくちゃくちゃだけど』『あつかったらぬげばいい』のクリスマス仕様のカバーと帯の入稿。

ヨシタケさんの作品は各社でクリスマスバージョンをだされているとのこと。すごい!

9/15

夕方すこしモギさんとeleven2nd・ハシモトさんとお会いしたけれどあとはずっと家。

もくもくと松岡茉優さんの本文を進める。

著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。