コアラ日記

この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第16回

9月の日記(後半)

2023年12月31日掲載

9/16

セブンイレブンにしか外出をしなかった。

いろいろな雑事でへとへとになっていたら水鈴社・篠原さんから美味しそうな和食の写真が届く…。

届いたものは写真だけでなく、デザインをした『スピノザの診察室』(夏川草介著)のプルーフ版と販促のボールペンなども届く。

プルーフ版というのは、刊行前に書店員さんなどに読んでいただくためのもので、刊行されてしまえば、無用のもの。

プルーフ版を作ったのは、2冊目…くらいかもしれない。

販促のボールペンは篠原さんおすすめのJETSTREAMで、JETSTREAMか…とためいきをついていたら

「JETSTREAMは一番の書きごこちですから!」と強く言われ、届いたペンを使い始めたけれど、わたしはSigno派で変わらず。好みの問題。

大学受験の時に、デッサンの鉛筆はHi-uniにお世話になっていたということもあるかも。

9/17

ずっと家。

録画で観ていたドラマ「VIVANT」が最終回だったのでリアルタイムで楽しんだ。

もうこれでハラハラしなくてすむ。でもさみしい。

9/18

池袋パルコへ。

担当したブリアナ・ギガンテさんの絵本『ブリアナ・ギガンテのほんとうにあったかわからない物語展』が最終日だったのですべりこみ。

絵本の内容はもちろん全部わかっているけれど、衣装や、ブリちゃんがうごいてくれるARや、そしてなによりブリちゃんの写真たちが可愛かった。

ブリアナさんも、muneさんも、編集の幻冬舎・袖山さんもとてもやさしくて、いい仕事でした。

限定の豪華本もあって、幻冬舎・制作の西山さんにも大変お世話に。

池袋は、大学の4年間アルバイトをした街で、特に西武デパートにはかなり愛着があり、ぽえむ・ぱろうるでは穂村弘さんの歌集も買ったし、

ARTVIVANTでもいろいろ買ったし、セゾン美術館もとても行ったし、地下の惣菜屋は全部の店を把握していた。

外から、西武デパートとPARCOのつながる風景を撮ってみた。快晴。

そういえばセゾン美術館で柳宗理展を観ている時、柳さんと思われる方も会場にいらしていて、心の中で「ヤナギソーリ!」と思ったのを思い出しました。

9/19

ボリス雑貨店へ少し行き、午後はずっとマガジンハウス。

まだ言えない著者ふたりの本に収録される対談が行われた。

著者Aさんと、ゲストの方の対談二本立て。

ゲストさんにつきそいで来られた方が、とてもよくしっている編集者の方でびっくりした。

いとこさんなのだそう。

対談終了後、著者Bさんも合流して長い打ち合わせ。言葉遊びの本ということもあって、

途中から名前のアナグラム大会になり、楽しかった。

アナグラムというのは、文字の入れ替えをする遊びで、たとえば ナクイナオコならコイナオナク、恋、なお泣く。

などになる。この日記の担当編集さんの名前でやってみると、巫女、濃く闇。

ちょっと格好いい…。

遊びの記録のホワイトボードを記念に撮影。

9/20

いつもの歯医者へ。もうほんとうになにも書くことがない、ルーティンの掃除。

午後、晶文社・安藤さんと青木海青子さん『不完全な司書』打ち合わせ。

安藤さんはほんとうに丁寧な方で、びっくりする。

夕方はいつものナナロク社・村井さんと打ち合わせ。

ヨシタケシンスケさんの、次のMOEにつく付録の絵本の表紙を提出。

福音館書店「こどものとも」のラフ。

小川糸さん『椿の恋文』ラフ。これは『ツバキ文具店』シリーズの3作目で、シリーズものは記憶を呼び起こすのに少し時間がかかるけど、

思い出せるとすんなりできる(気がする)。

もろもろ終えてFUGAでお花を購入。ロータスでケーキも購入。

きょうは穂村さんの奥さんの誕生日で、ひとりだというので、猫ごと夕飯においでと誘ったのだった。

ピンクのイチゴショートケーキに細い蝋燭をたくさん立てた。

お家まで車で送って、バイバイする。

9/21

大和板紙さんと打ち合わせ。

祖父江慎さんの作った「ゆるチップ」の新色を見せていただいたり。

9/22

千早茜さん『さんかく』の文庫のフェアにつくカットアウトのしおりラフ。

それしかやっていないわけはないのだが、なんの記録もなく思い出せず。

(この日記はその日に書いていない、夏休み最後の日の追い込みみたいな日記なのです。)

「代々木へ」というメモはあるんだけど…何しにいったんだろう……。

9/23

ずっと家。

とある画集の本文作業。

9/24

ずっと家。

とある画集の本文作業。

9/25

俵万智さん『アボカドの種』入稿。

三宅瑠人さんの絵にたいへん助けられて作業。

矢部太郎さん『楽屋のトナくん3』の本文作業。

コンドウアキさん『ムムさんのまほうのケーキやさん』作業。

9/26

ジムへ。

午後は21_21で11月から行われる展示に参加するので、本のピックアップにグラフィック社・室賀さんが来てくださる。

左右社・筒井さんから田中芽衣子さん『私は日本狼アレルギーかもしれないがもう分からない』見本が届く。

お手紙が挟まっていて、それがとてもやさしくてうれしかったので、写真に撮った。

9/27

集英社にて、まだ言えない本(すみません…)の打ち合わせ。

その後、となりの小学館に寄り、SF短編7巻のチェック。

齋藤陽道さん『よっちぼっち』のラフをやっと提出。

小玉ユキさん「狼の娘」のFlowers扉ラフ。

『〈きもち〉がいちばん好きなもの』(ティナ・オジェヴィッツ文・アレクサンドラ・ザヨンツ絵)ラフ。

『〈きもち〉はなにをしているの?』に続く2作目。どちらも森絵都さんが翻訳。

9/28

ずっと家。とある画集入稿。

江國香織さん訳の『更科日記』文庫ラフ。

午後、京都のミシマ社さんと佐藤ゆき乃さん『ビボう六』のオンライン打ち合わせ。

佐藤さんは岩手県にお住まいとのこと。

西村ツチカさんに絵もお願いできて、もう安心。

9/29

福井へ。グラフィック社・津田さん(a.k.a.チュンコ先生)と越前で和紙見学。

何回行っても、まだ見てないことがあって、すごいところだ…。

9/30

名古屋駅経由で津田さんと帰京。名古屋でひつまぶしを食べた。

どこかに行っても早めに帰ってくるとその日がまだまだ使えて便利。

点滅社さんの新刊の本文作業。

著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。