コアラ日記

この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第34回

6月の日記(後半)

2024年9月30日掲載

6/16

福岡2日目。

水戸部功さんと、ちょうど太宰府で行われている福岡アートブックフェアへ。初めての開催らしい。

パッケージに竹尾さんの紙を使っているという梅ヶ枝餅屋さんの「やす武本店」に寄ったりしながら太宰府へ。

(このお店は店内の設えもとても美しいし、超おいしいのでおすすめです)。

最初の頃のTABF(東京アートブックフェア)を思い出すような、混沌とした感じが楽しかった。

素敵な本をたくさん購入。水戸部さんに買いっぷりを褒められる。

本が好きな人と見るブックフェアの楽しさよ。

出店していた脇田あすかさんやユトレヒトさんや、東京の知り合いたちにもご挨拶。

太宰府でおみくじを引いたら、わたしは小吉、水戸部さんは吉だった。

小吉って、なんていうか、なにもない、というような感じ。待てばなにかある、みたいな。

太宰府御本殿はちょうど大改修の仮殿で、藤本壮介氏の建築が本当にすばらしかった。

屋根の上に森が出現していた。

これを見れただけで、来てよかったと思う(目的が違うが)。

もつ鍋を食べて新幹線へ。

6/17

映画「シャーリィ」へコメント。

物書きっておそろしい…。本好きの人は楽しめる映画だと思いました。

主婦と生活社へ、るるてあさんのコウペンちゃん絵本の色校へ。

6/18

加藤一二三さん×茂木健一郎さん『ほがらか脳のすすめ』ラフ。

早川書房・三井さんと『フォース・ウィング』(レベッカ・ヤロス著)打ち合わせ。

竹尾へ行き、NTラシャをゲット。

6/19

昨日のNTラシャを持ち、井上佐由紀さんのスタジオへ。果物を撮影した。

ふたりで作っている絵本、福音館書店の「ちいさなかがくのとも」の3冊目が始動したのだ。

ミモザブックス・照山さんと打ち合わせ。

水戸部功さんの事務所へ寄り、前に使われていた加工のことを教えていただく。

芦澤泰偉さんにお声がけいただいた食事会があったので、水戸部功さん、芦澤さんのスタッフさんたちと合流。

6/20

午前中、扶桑社・秋葉さんと谷村新司さんの事務所にて打ち合わせ。

午後、朝日新聞社にて、取材を受ける。カメラマンさんも記者さんも面白くてあっという間に時間がすぎてしまった。

夕方、小学館・村松さんのところへ。

6/21

堀道広さんに金継ぎをおねがいしていた、うさぎとプードルとプードルが届く。

大事にしていたものたちだったので、ほこらしい顔で帰ってきたのを見て、うれしかった。

万城目学さん『魔女のカレンダー』本文入稿。

マームとジプシーたちといろんな打ち合わせ。

ナナロク社・村井さんと打ち合わせ。

6/22

チュンコ先生の家で100%ORANGEまゆこさんと3人でご飯。

グラフィック社の社長就任祝いなので、花でも買っていこうと、近所の花屋に寄ったら、一緒にお仕事をしているYさんとばったり。しばし立ち話。

お祝いなのだが主賓にたくさんご飯を振る舞っていただく。

ほやも買っておいてくれたので、さばく。

みんなほやが好きになってきていてうれしい。

まゆこさんが「ポンジャン(ドンジャラのようなもの)」を持ってきていて、説明書を読みながら2周遊ぶ。チュンコ先生が勝つだろうと思っていたのだが案の定の大勝で、お祝い接待のようになった。

福永信さんの誕生日で、毎年メールを送ることにしているのだが、今年、お祝いの言葉にちょっとした愚痴を書いてしまい(反省)、そしたらやさしいメールが返ってきた。

埴谷雄高の言葉「精神のリレー」、を教えてくれた。

6/23

朝起きて、めずらしく今日はマニキュアを塗ろうと思い、ベランダで風に吹かれながら塗る。

洗濯を干そうとしたらハンガーに爪が当たって何本もだめにしてしまい、全てオフすることに…なんだか一日のスタートが最悪、と思いつつ、クロヌマタカトシさんの展示が今日までだ!と思い出し、五本木のギャラリーへ。

展示は本当に素晴らしくて、最後にクロヌマさんに「これが一番好きでした」と話しかけたら、持ってみますか?という思いがけない言葉。

小さな頭部だけの像を手の上に乗せていただく。

さっきまで床(展示面)に左の頬をあずけていた頭部が、いまは右に傾いて、わたしの親指のつけ根に身を預けてきて、なんだか胸がいっぱいになってしまって、涙が。

この人(頭部)に心の中を全部話してしまいたい気持ちになった。

もう売約済の作品だったので、寂しく思ったけれど、買ってしまったらこの人が親友になってしまいそうだった。

オオゼキの近くだったので、入ってみた。

フジモトマサルさんが「一番いいスーパーはオオゼキ」と言っていたけれど、わたしの生活圏にはなかったので、はじめてのオオゼキ。

キウイブラザーズの新しいキャンペーンをやっているようだったのでゴールドキウイ購入。ブランケットが当たりたい。

夜は絵本を27冊読んだ。

6/24

浅生鴨さん色校を見に左右社へ。

夕方から、チュンコ先生と銀座の松栄堂ではじまった、装飾師・錦織ほまれさんの展示へ。

ほまれさんは越前で知り合ったすてきなお姉さん。

季節の飾りにうっとり。心の余裕のある暮らし……。

そのあと、江戸前芝浜にて3人でご飯。

6/25

万城目学さん『魔女のカレンダー』そとまわり入稿。

板橋区立美術館にて何かの打ち合わせ。

6/26

お寿司を食べた!

6/27

荒井良二さんが絵を描いたCDとレコードのデザインを担当することになったのでSalyuさんのスタッフさんと打ち合わせ。

小学館へ行き、荒井良二さんと最果タヒさんの絵本『うつくしいってなに?』色校。

チュンコ先生と、水鈴社・篠原さんと食事。

6/28

『ほがらか脳のすすめ』入稿。

『裏庭のまぼろし』(石井美保著)色校。

左右社にて『空き箱』(福永星著)色校。

色校三昧の一日。

6/29

今年もレモンの木にアゲハ蝶の幼虫がきている。

いつもなら最後まで面倒を見るのだが、今年はわたしのせいで、レモンの木が瀕死で、とても葉が少ない。

青虫くんたちを養うとレモンが枯れそうなので、マンションの玄関にちょうどあるレモンの木(とても大きい)に4匹ほど運ぶ。

Salyuさんとオンライン打ち合わせ。

6/30

東京都美術館にてデ・キリコ展。

1993年に庭園美術館でデ・キリコ展を見た時はなんだかすごく怖かったのだが、今見ると、怖さは減っている。

時代によってうつろう作風に人間味を感じる。

ヒグチユウコさんの缶バッジも購入。

朝5匹運び、午後5匹運ぶ(青虫くん)。

最近の名久井さん

仕事ばかりしています。

著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。