コアラ日記

もくじ
この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第57回

6月の日記(前半)

2025年9月15日掲載

6/1

ベランダのレモンの木に肥料。

Googleカレンダーに「毎年繰り返し」で入っているので、忘れない。

吉祥寺のコピスへ行って癒された。

6/2

愛野史香さん『天使と歌う』ラフ。

朝、車をディーラーに連れて行き、毎年恒例の検査。

人間よりこまめに検査されている。

午後、YUKI FUJISAWAさんのアトリエへ。

受け取るものを受け取りつつ、著書『わたしを編む』を買わせていただいた。

佐々木暁さんの装丁が美しい(一冊ずつ、箔押しが違うんですよ!)。

夜、小学館・今本さんと、チュンコ先生とご飯。

6/3

夜B&Bにて短歌のイベントへ。

穂村弘さん×脇田あすかさん×木村亮さん×筒井菜央さんたちが登壇。

6/4

MOEのふろくのクリアファイルラフ。

「デザインのひきだし」の連載「本づくりの匠たち」の取材で大阪へ。

田中手帳さんを訪問。帰りにチュンコ先生と村田金箔さんの展示も拝見。

こないだ大阪に来た時よりも、万博開催中のせいか、駅の中の案内がもりっと増えていた。

でもわかりやすさはあまり増えていなくて、微妙な気持ちに。

夕方の新幹線で帰京。

6/5

junoさんの絵本作業。

MOEのヒグチユウコさん連載「日々の綿」ラフ。

尹雄大さんとイリナ・グリゴレさんの往復書簡本の本文作業。

ブルーシープ・水野さんたちと「大どろぼうの家」の展示関係の打ち合わせ。

PHP桑田さん、ほしよりこさんとzoom打ち合わせ。

彬子女王殿下とほしさんの本『飼い犬に腹を噛まれる』を担当していたのだった(やっと書けた)。

夕方からナナロク社・村井さんと打ち合わせ。

村井さんは「このあと佐内正史さんのところへ行く」と言っていた。

ヒグチユウコさんの来年の手帳の表紙色校。

佐内さんから村井さんと打ち合わせしている写真がLINEで届く。

6/6

松岡茉優さんファンクラブ会員証のデザインラフ。

午後、岩崎書店へ行き、くどうれいんさんと柴田ケイコさんの絵本『まきさんのソフトクリーム』色校。

岩崎書店は引っ越していて、下にパン屋さんがあった。

関口フランスパンさんといって、日本のフランスパンの先駆けらしい。もちろん寄った。

夕方から、銀座のDOVERでIrma Boomさんのトークイベント!

なんとなく水戸部さんがいるのではないかとキョロキョロしたけどいなかった。

客層が、普段の本のイベントとは全く違う感じで、そこもまた興味深かった。

イベントの後にイルマさんと少しお話しさせていただき「アトリエにもいらっしゃい」と言っていただいた。

忘れないよ…そして本当に行っちゃうよ…!

引き合わせてくださったPOSTの中島さんに感謝。

6/7

チュンコ先生とTKと恒例の釧路へ。

まるひら(もう完全に覚えられている)へ行き、和商市場のいきつけの店(もう完全に覚えられている)へ行く安定のルート。

今回はじめて、「雷さとう」というすばらしいスーパーへ行った。

チュンコ先生が厚岸の牡蠣を食べるのをじっとりと見つめた(わたしはもう食べられない)。

6/8

朝はまたまるひらを食べ、昼は豚丼ぱんちょう。

六花亭の帯広本店で「さくっとパイ」を購入して車中で食べ、午後帰京。

『まきさんのソフトクリーム』修正作業など。

これまた毎年恒例梅酒作業もした。水の中にうかぶ梅は毎年かわいい。

産毛(?)のまわりに空気がついて、キラキラしている。

6/9

桃山鈴子さんと堀本裕樹さんの本『六四五七五』作業。

hayaoki books 鼈宮谷さんと打ち合わせ。

6/10

ジムへ行き、代官山蔦屋へ寄り、初谷むいさん歌集本文作業

夕方から素敵な本の打ち合わせ(まだ書けない)。

6/11

西生ゆかりさん句集の本文作業。

午前中、白山の新里製本所へ行き、布を見せていただいたり。

そのまま北上して福音館書店・北森さんと打ち合わせ。

6/12

朝、飛行機に乗りパリへ向かう。

飛行機の中で、孤独のグルメの映画を観たら、ちょうど乗っているJALのパリ行きの飛行機から始まるので、なんだか臨場感があった。

ご飯とご飯の間の時間に、眠れなくて、小腹もすいて、スナックコーナーへ行ったら、おっとっとの小袋があったのでもらって座席へ。

おっとっとは昔から、ヒトデだけを食べていて、他のは誰かにあげていたのだが、この状況ではヒトデ以外をあげる人はおらず、全部食べようと決心して一つ目を口へ。

薄暗いけれど、ヒトデだった。ふたつめも、ヒトデだった。

思わず読書灯をつけて中をみたら、ぜんぶヒトデだった!

運を全部使ってしまったのではないかと震えた。

夕方到着してホテルへ。

てくてく歩いてLa Grande Epicerie de Parisでうっとりして、お惣菜を買ってホテルへ。

タブーリと生ハムと木苺とオレンジーナという好きなものだけの夕食。

初めて泊まるホテルだけど、階段の途中のすごく狭い部屋で、従業員が泊まる所みたいな感じ。でもぜんぜん嫌ではなく、むしろ心地よい不思議。

6/13

朝からルーブル美術館へ。予約していたLOUVRE COUTURE。

この展示を観るのも今回の旅の大きな理由のひとつだった。

3時間かけてじっくり堪能。

常設展はほとんど見なかったけれど、モナ・リザの前が、ライブ会場のように人だかりで、携帯電話のカメラを頭上で掲げる人々の写真を後ろから撮った(それで満足した)。

午後はいろんなところを巡り、夜、皆川明さんに勧めていただいていたMaisonで一人がっつりディナー。

すばらしかった。ご飯も、皆川さんの壁画も。

調子にのってペアリングでワインをめちゃくちゃ飲んでしまったので、ほろよいで戻った。

6/14

朝起きたら、ポシェットの中に覚えのない焼き菓子があって、Maisonの袋だった。お土産にもらったらしい。記憶がない。

ほろよいではなく泥酔だったのではないか。

CINEMATHEQUEにてウェス・アンダーソンの展示。

ちょうどパリに来ていた友人Hさんと、はじめましてのMさんと合流。

Hさんとは7年ぶりに会ったけれど、昨日会ったみたいな感じで再会。

お昼はHさんおすすめの人気フォー屋さんへ。

機内のおっとっとの話をしたら、ふたりとも感動してくれた。

大好きな古本屋さんに連れて行ったら、なんと閉店。

隣の会社にも突撃して聞いてみたけれど引っ越し先もわからず。

おじいさんがやっていた店なので、もう本当にないのかもしれない。

わたしのパリがひとつなくなってしまった。

いったん別行動をして、夜は3人でLe Poule au Potへ。ご飯の後、近くの中央郵便局へ行って切手を購入。

土日はどこも切手が買えなくて困っていたのだった。

地下鉄に消える二人を写真に撮った。

6/15

朝ごはんは3人で、ピカソもきていたというLa COUPOLEへ。

わたしたちずっと友達だったみたいだわ、という話になり、全員丸顔だからなじみやすかったのではないか、という結論に。

ふたりと別れ、近くのポストに葉書を投函。

YVON LAMBERTへ行ったら、

「最初のお客さんだからコーヒーを淹れてあげるよ」と言われお兄さんにご馳走になった。

どっちのカップかな?と見つめていたら「かわいいほうが僕のだから!」と遠くから声が。

お兄さんのカップはスヌーピーだった。

本屋の中でコーヒーを飲む贅沢。

ぷらぷらしていたら、偶然LIVRES RARES & ARTというイベントを見つけ、入場して堪能。

午後はまた3人で合流、ヴァンプの蚤の市へ。

そのあとは一人で本屋さんをまわりまくった。

最後にSHAKESPEARE AND COMPANY書店へ寄ってみたけれど、大行列で入れず。

前に本を担当したことがあり、100%ORANGEさんに外観を描いてもらった、そのまんまだな、と外だけ味わった。

夜は飛行機へ。

最近の名久井さん

矢部太郎さんとものすごい本を作っています。

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著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。