コアラ日記

もくじ
この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第58回

6月の日記(後半)

2025年9月30日掲載

6/16

夕方に羽田に到着。
到着間際、ずっと目の前の画面を前方カメラモードにしていて、自分のマンションを探した。
またも、近所の大きいビルに隠れて見えなかった。
少しずれたら見えそうなので次回もチャレンジしたい。

夜、実は帰りの飛行機でサッともらってきた例のおっとっとをまじまじと見た。
外装に…ヒトデの写真しか載っていない。そして「ピザ味」。
検索してみると、ピザ味自体は昔あったものらしいが、この外装のものは、JALオリジナルのようだった。

パリで会った3人LINEグループに写真つきで報告。
「パッケージにヒトデしかなくない??」
と、とてもウケてもらえた。
ラッキーすぎると思ってたのに仕様だったよ、と答えたら、「でもそれが名久井さんに当たったってことが大事。
ヒトデオンリーのおっとっとが機内でのスナックになってたってことが大事」と励まされた。
ふたりはまだスイスにいて、スイスの風が伝わってくる。
ちょっと前まで3人でいたパリがまだ続いている。

6/17

夕方、左右社・筒井さんと打ち合わせ。

6/18

夕方、ナナロク社・村井さんと打ち合わせ。
いつものカフェがもう閉店時間で、違うカフェへ。
クリームがもりっと盛られたコーヒーを二人で堪能。
初谷むいさん歌集の装画のタムくん(ウィスット・ポンニミットさん)から素敵な絵が届く。

大どろぼう編の谷川俊太郎詩集『星たち』色校戻し。
これは、印刷立会に行った方が安心かもしれないと思う。

6/19

Junoさん絵本ラフ。
初谷むいさん歌集ラフ。

6/20

夕方、TOPPANクロレ・Kさんと打ち合わせ。

6/21

夜、カジュアルなお寿司屋さんへ行ったら、近くの席に、あこがれの人(書かずにおきます)が数人で来ているのに気づき、いつもキチンとした格好をされているあこがれの人がラフな格好なことに感動。
もうすぐ横浜で展示が始まるのでそのご準備でしょうか…と思いながら、チラ見して目を伏せました(好きすぎて見られない)。

パリで会った友人とDuolingo(言語を学ぶアプリです)の話になり、「リリーの飼い犬の名前が途中からMaxに変わっているからなぜだか聞いてみて」と言われ、会話の中で聞いてみたら、ちゃんとその設定?は共通らしく、Maxの方が名前が言いやすいし格好いいから変えた、という返事。

6/22

福永信さんの誕生日なので、メールを送った。

群馬県立館林美術館の「鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展」へ。
明日行くよ、と穂村さんに伝えていたら、先に着いていてびっくり。
初めて行く館林美術館は建物もすばらしく、思いがけずフランソワ・ポンポン推しで、ポンポンの仕事場なども再現されており、とてもいいところだった。
帰りに名物のうどんでも食べようと検索すると、一軒だけまだ閉店前で、Googleの口コミもよいので行ってみた。
雰囲気は面白かったけれど…どうにもな感じで、Mapにハートの逆があればいいのにと思った。黒いハートとか。
もう行かないように気をつけないといけない。
PAに寄って抹茶ソフトクリームですべてを洗い流した。

6/23

中前結花さんエッセイの本文作業。
矢部太郎さんと打ち合わせ。楽しそうなことが始まる。
夕方から、スペイン語の通訳として長年尽力されてきた鈴木重子さんの講演会へ。
前にバルセロナで落ち合った友人Kさんと、そのお母様と合流。
6/24に行われるカタルーニャ地方のサン・ジョアン祭りで食べられるという、コカ・ダ・サン・ジョアンという甘いパンも振る舞われた。甘いパンは正直そんなに好みではないのだけれど、お祭りに食べるというお祝いを分けてもらうような気持ちで、美味しくいただいた。


6/24

TOPPANクロレ・Kさんのところへ色校を届けに(宅急便を出しそびれたから)。

鍼へ行き、ナナロク社・村井さんと打ち合わせ。

6/25

夕方美容院へ。
穂村さんの奥様にパリ土産のMerciのバッグをあげたら、あとで穂村さんは「大学の頃から持ってるみたいだね」と言ったらしい。
最初からクタクタなのがいいところなのに!

6/26

はしもとみおさんと打ち合わせ。
ナナロク社・村井さんと打ち合わせ。

6/27

KADOKAWA・林さんと打ち合わせ。
市谷の杜 本と活字館で「ギャビー・バザン デザインのアトリエ 活版印刷」オープニング。
これは、グラフィック社から日本語版が刊行されている絵本が元になっている展示で、デザインも担当していないのに、実は帯文を書かせてもらっている。
わたしが洋書を(勝手に)グラフィック社に売り込んだからなのだ…。
ギャビーさんにもお会いできて、ありがとうと言われ、不思議な気持ちに。
パートナーの方がパリで本屋さんを開くと言っていたので、いつか行けたらいいなあ。
夕方、Numéro・金原さんとライター・林さんにプチインタビューを受けた。

6/28

恒例チュンコさんとKちゃんとこんにゃく作り。
こんにゃくノート(毎回記録している)で研鑽を積み、かなりいい感じに仕上がるようになった。
毎回チュンコ料理が素晴らしいのだが、今日はアスパラガスを生ハムで巻いて春巻きにしたものが絶品だった。

例のおっとっとの話をするといろんな考えが飛び出した。
「海外で生産していて、すべての生き物の型が作れなくて星型だけになったのではないか」
「海外ではイカなどの魚介を食べないところもあるから、無難な星型だけ(ヒトデというわけでもなく)にしたのではないか」など。

6/29

パリではじめましてだったMさんちへ、こんにゃくを届けに行った。
わがこ(んにゃく)が可愛くて、ついつい人に食べさせたくなってしまい、いきなりのお家訪問だ。しかもMさんは料理家さんだ…!
写真ではよく見ていたMさんの真っ白な愛犬Pさんがかわいくてかわいかった。
こんにゃくも味わっていただいて、すばらしいランチ麺も堪能、さらにスイスお土産までいただいて帰った。
紙袋に入ったお土産は福袋のようで、行く先々で、わたしのことを思ってくれていたのだなあ、パリの後も旅に連れて行ってもらっていたみたいで、じんわり。
とくに、とてもうつくしいレリーフのようなクッキーを見て、割れずに運んできてくれたことに、ほろり。

夕方、『もじモジ探偵団 文字バンザイ編』刊行記念トークへ。
フジテレビのタイトルデザインをされてきた岩﨑光明さん&雪 朱里さん&津田淳子さん登壇。
岩崎さんや先輩方の手書きのタイトル文字を拝見できて楽しかった。

夜、散歩していて、川名潤さんの事務所を見つけた。
ここかあ!と写真に。

6/30

中脇初枝さん『伝言』の文庫ラフ。単行本に続いて五十嵐大介さんの絵。
平和紙業・Nさんと久しぶりにお会いした。
夕方MOEにて森下さんと田中達也さんのカードブック打ち合わせ、その後小学館にて加古さんと打ち合わせ。

最近の名久井さん

矢部太郎さんと作った本(厚さ6センチ)が手を離れ、
できあがりが楽しみです。

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著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。