コアラ日記

もくじ
この連載について

ごあいさつ

はじめまして。
わたしはふだん本のデザインの仕事をしています。
日記を書いてみたらとすすめられたので、書いてみますが、
たぶんあまり得ることのない日記です。
コアラの絵はヒグチユウコさんが描いてくれたわたしです。
なので、コアラ日記というタイトルにしました。
どうぞよろしくお願いいたします。

第59回

7月の日記(前半)

2025年10月15日掲載

7/1

TOPPANクロレさん三島工場で『谷川俊太郎詩集 星たち』(大どろぼう編)印刷立合い。

現場の方までいつものチームというような感じで、安心の結果に。

来てよかった。

7/2

連日のTOPPANクロレさんへ。昨日とは違う場所なのだった。

ゲオルグ・ハンスレーベンさんと梨木香歩さんの絵本『森のはずれの美術館の話』色校。

はじめて見たゲオルグさんの原画が予想外の状態でびっくりした。

あの透明感はそうやって生まれていたのか…という感じ。

こちらも昨日と同じチームが見てくれるので、安心しかない。

わたしの情緒を掻き回すのは色校なので、いつもいい色校であってほしい。そうでないと、頭の中に罵詈雑言が溢れてやばい。

7/3

午後ミシマ社・三島さんと本上まなみさんの本の打ち合わせ。

まなみちゃんが東京にいるときは、たびたびおいしい手料理をご馳走になっていたけれど、京都に引っ越してからはなかなか会えず、でもゲラを読んだら、もうそのままの彼女で、とてもよかった。

夕方から、下北沢のB&Bにて鈴木成一さんの装丁の学校のゲストとしてお話しした。

自分の話はさておき、生徒のみなさんの課題が熱く、考えてたらわたしもぐったり。

水戸部功さんが来てくれていて「明日着の荷物が届くから」と伝えた。

今日会えるなら…持ってきたのに…!

7/4

MOEのヒグチユウコさん連載「いじわるねこ」ラフ。

桑原茂夫さん『不思議の国のアリス 完全読本』新装版ラフ。

午前中、中前結花さん、oyasmurさん、hayaokibooks・鼈宮谷さんと『ミシンは触らないの』zoom打ち合わせ。

oyasmurさんとお仕事するのは2冊目なのだが、お顔を見たのははじめて。

zoomって不思議だなあ。

夕方、渋谷ヒカリエで開催中の「レオ・レオーニの絵本づくり展」へ。

こちらは宣伝は担当していなかったけれど、ヨックモックさんとのコラボレーションクッキーなど、自分でデザインを担当したものや、考案したグッズなどが出来上がっていてうれしい。

グッズ会社さんのやる気を感じた。

7/5

吉祥寺美術館・道家さんと打ち合わせ。

北田卓史展について。

真夜中、子どもの頃のシルバニアファミリーセットを出してきた。

(ずっと一緒に引越しをし続けてきたけれど、だいぶ開けてなかったのです)

久しぶりに会うグレーのうさぎたちは薄汚れていたけれど、家族みんな元気そうだった。

細かいもの(フォークなど)は家具の引き出しに入ってたりして、子どものわたしに会えた気がした。

無くなっていたり、ごちゃごちゃに積み込まれた長年の重みのせいか、破損している家具もあって、遊ぶわけでもないのに、いつまで持っているのか、わたしよ…と自問自答。

最近のシルバニアは、ペルシャネコの三つ子の赤ちゃんには癒されているけど、お店をいつも見つめているだけで、家具には手をだしていない。

クラシックブラウンシリーズは気になるんだけど…なにか…なにかが違うのです。

7/6

昼間、映画館に「JUNK WORLD」を観に行った。

夜はチュンコ邸にてご飯。

本当はTKがうにを買ってくる予定でセッティングされたご飯会だったけれど、飛行機の関係で、うにもTKも帰って来られず。

しかしうになどなくても、チュンご飯は最高。

7/7

午前中、福音館書店・北森さんとうちあわせ。

そのまま神田ポートビルへ。ゆかい・池田晶紀さんの個展。

ご本人がいたので、写真集にサインをいただいたり、サウナの案内をしていただいたり。

いつかサウナというものをちゃんと味わってみたいものだ。

ホテルのお風呂についているおまけのようなサウナは一瞬入ったことがあるし、フィンランドでも、ちょっと体験したことがあるけれど、作法?とか、ととのう?とか謎ばかり。

夜、ボリス雑貨店で(映画を観るまで我慢していた)「JUNK WORLD展」を堪能。

7/8

ホテルのようなところで合宿をしていて大食堂でみんなで食事。

足りないお皿はチェーンの他のホテルからFAXで届くようで、絵柄がモノクロになり、ちょっと荒れている。

という夢を見た。

7/9

税理士さんと打ち合わせ。

グラフィック社にて、ある本のインタビューを受けた。

マンションの自転車置き場の隣の人(の自転車)が暴れん坊でつらい。

7/10

田中達也さんのカードブックのカバーラフ。

お昼頃、100%ORANGEさんのところで色校。

及川さんの車とわたしの車が並ぶと色がかわいいので写真に撮った。

ヒグチユウコさんと久しぶりに会い、もらったり、描いてもらったり、しゃべったり。

ユウコを充電した。

7/11

立川のPLAY! MUSEUMの設営へ。

まだまだ先だと思っていた「大どろぼう展」がもうすぐはじまるのだ…。

図面では想像しきれてなかった世界が立ち上がっていて、もう楽しかった。

張替さんの現地用図面が素晴らしく、新井風愉くんのミッションインポッシブルな装置も楽しそう。

夜、ナナロク社・村井さんと、初谷むいさんと木下龍也さんと合流してご飯。

初谷さんをホテルまで送りながら、ふたりでお話しできてよかった。

7/12

ばたばたと仕事をこなし、夕方からチュンコ先生と福井入り。

7/13

福井のお館様たちに案内していただいて、今まで見そびれていた福井を堪能。

もちろん川上御前のところにもご挨拶へ行った(とても美しい岡太神社)。

お館様のお家へ寄ったら、お母様が干していた梅干しが並べてあって、いっこ食べてしまった。干してある梅干しを食べると、大学時代の同級生・ハッシーを思い出す。

ハッシーのアパートの大家さんが干していた梅干しを一緒に失敬したことがあったのだ…。

夜は各々解散して、わたしは金沢へ移動。

7/14

午前中、金沢の上出長右衛門さんのお店で、上出惠悟さんと打ち合わせ。

小川洋子さんの『続 遠慮深いうたた寝』が刊行されるので、前作に引き続き、上出さんに作品をお願いしたく、打ち合わせにきたのだった。

ちょうど、わたしが追っかけをしている「ちゅう右衛門翁」の作陶展も行われていたので一石二鳥。

上出さんとおかゆランチを食べて、かわいい車で駅まで送っていただいてバイバイした。

7/15

「大どろぼう展」内覧会。

挨拶をせねばならず、ぜったいぜったいに遅刻できない日なのに、超ぎりぎりに到着し、素晴らしいみなさま揃い踏みの中、汗だくのまま謝るところからスタート。

本当にだめなわたし…。「名久井さんはいつも走ってますね」と言われてしまう。

ブルーシープ・草刈さんとわたしは「どろぼうの服」がドレスコードだったので、黒いツナギと赤いニット帽で参加した。草刈さんはダンディなシルクハットでずるかった。

他の方は担当コーナーの色を身につけてくるのがドレスコードで、幅允孝さん始め、みなさん素敵なお召し物。

トリコロールのヨシタケシンスケさんはどうかな…と見てみたら、ポケットに3色ペンがささっていた…! それもずるい!

何度もお仕事をしているのに、ヨシタケさんに初めてサインをいただいてうれしい。

最近の名久井さん

小川洋子さんの『続 遠慮深いうたた寝』は10月16日発売です!

もくじ
著者プロフィール
名久井直子

ブックデザイナー。1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。2022年BEST BOOK DESIGN FROM ALL OVER THE WORLDにてBronze Medal受賞。